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ライラック  作者: 遠藤 敦子
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 いよいよ月曜日。今日は休みなので、朝9時まで寝ていた。仕事がある日は6時に起きているので、こんな時間まで寝ていられるのは僕にとって最高だ。午後からジムに行くと決めており、午前中は家事をしてのんびり過ごす。

 YouTubeやインスタグラムを見ていたらあっという間に午後になった。僕は自転車でジムに向かう。ジムでは1人で黙々と運動する。男性客しかいないので気は楽だった。今頃、渋沢さんはどうしているのだろうか。仕事かな、それとも休みかな。そんなことを考えながら運動する。休みの日まで渋沢さんのことを考えている自分に気づいてしまった。

 火曜日、僕は日中の仕事を終える。早番なので早く帰れる日だ。遅番の店長がリーダーとなり、本日の業務を指揮する。店長のご厚意で、僕は先に休憩に行かせてもらうことになった。

 早速休憩室に向かう。渋沢さんが先に来ていて、お疲れ様ですと僕は声をかけた。しかし渋沢さんの様子が以前とは違うように見える。

「何かありました?」

僕がそう聞くと、渋沢さんはポツリポツリと話し始めた。年配の女性客が1年前に販売された商品を持ってきて、「私にはサイズが小さかったので返品してほしい」と言ってきたそう。渋沢さんが「お客様都合の返品はできかねます」と言うと、その女性は「じゃあどんな理由なら返品できるの! あんたみたいな下っ端じゃ話にならないから店長とか責任者呼んできてよ!」と店内中に響き渡るような金切り声で絶叫したという。結局は店長が対応して返品することになったけれど、その女性客は要注意人物として系列店にも情報共有されたらしい。

 そんなことなら僕にも考えがある。すかさず立ち上がり、僕は自動販売機で渋沢さんがいつも飲んでいるいちごミルクを買って渡した。

「いいんですか? ありがとうございます」

そう言われたので、僕は

「今日じゃなくても良いんで、これ飲んで元気出してくださいね」

と返した。渋沢さんは「あ、あの……」と言いにくそうに話を切り出す。僕が「何ですか?」と聞くと、

「どこかで今日のお礼させていただきたいので、連絡先聞いても良いですか? 彼女さんとかいらっしゃったらごめんなさい」

とのことだった。

「なんだそんなこと……。良いっすよ。俺彼女いないし結婚もしてないんで」

僕は渋沢さんにスマホを向けてLINEのQRコードを差し出す。渋沢さんは震える手で僕のLINEのQRコードを読み込んだ。僕から連絡先を聞きたかったので、先を越された気分だった。しかし渋沢さんから連絡先を聞かれるなんて思っていなかったので、僕は純粋に嬉しかったのだ。

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