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ライラック  作者: 遠藤 敦子
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 翌日、里美から谷川について店長に相談したと報告の連絡が来た。谷川の特徴を伝えた上で今まで嫌がらせを受けたことや、職場に押しかけてくる可能性がありそうだと話したようだ。店長は「もしそいつが来たら里美ちゃんはバックヤードに隠れていいよ。私が対応するし、騒ぎ出したら警備員呼ぶから」と言ってくれたそう。心強い店長だ、と話を聞いていて僕も思った。

 里美の家にある物はどんどん少なくなっていき、里美本人も次第に僕の家から通勤する日が増えていく。それ以来谷川からのアクションは特になかったので、僕も里美も安心し切っていた。しかしある日、建物内の全店舗に不審者情報が共有される。該当店舗は里美の勤務先で、里美本人からもその件についてLINEが来たのだ。

 経緯としてはこうだ。谷川が里美のいるお店に1人で来店し、服もマスクも黒でさらにはサングラスまでしていたという。里美がレジから谷川の姿を確認し、インカム越しに店長に知らせ、店長以外のスタッフはバックヤードに避難した。店長が「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」と谷川を対応している間、バックヤードに隠れたスタッフが団結して警備員を呼んだそう。谷川が店頭で「渋沢里美を出せ!」と絶叫し、店長が「渋沢に御用ですか? 渋沢は先ほど退勤しまして……」と冷静な口調で伝えた。

「お前が店長か? 里美はどこにいる! なんで俺をストーカー扱いするんだ!」

谷川はこんな内容のことを興奮状態で言っており、もはや話が通じない状態だったそう。しまいには売り物のバッグやアクセサリーを床に投げつけ、壊し、売れなくした。そのタイミングで警備員が駆けつけ、谷川を取り押さえたようだ。結局谷川は里美へのストーカー、僕への脅迫、職場での業務妨害もあり逮捕された。谷川が逮捕されたことで僕たちに平穏が訪れ、仲も深まっていったのだ。



 あれから2年後、僕たちは入籍した。新婚生活を楽しんでいた頃、親友の直也から結婚式への招待状が届く。奥様は当時の飲み会で話に出ていた、職場の先輩だという。直也本人からLINEが来て、「一番に真志を招待したかったんだ。良かったら里美ちゃんも一緒に来てほしい」とのことだった。僕は快諾し、直也に頼まれていたスピーチも作成する。

 結婚式当日、僕と里美は式場に向かう。「真志、緊張してるでしょ」と里美に言われ、「そりゃあ直也の友人代表でスピーチするからね」と笑いながら返した。式場で誓いのキスをする直也と奥様はこの上なく幸せそうだ。僕たちは里美の希望でフォトウェディングにしたけれど、その時のことを思い出した。

 いよいよスピーチをすることになる。僕は少し手が震えていた。


 直也くん、美愛(みあ)さん、本日は誠におめでとうございます。ただいまご紹介に預かりました、新郎友人の岩合真志と申します。新郎のことは普段、直也と呼んでいますので、本日も親しみを込めて直也と呼ばせていただきたいと思います。僕と直也は小学校からの親友で、高校生まで一緒に過ごしました。高校卒業後は進路が別々になったのですが、社会人になってもよく2人でお酒を飲むことが多かったです。僕が社会人1年目の頃にうまくいかなくて退職したいと考えていたときも、相談に乗ってくれたのは直也でした。直也は一緒にいて楽しいだけでなく、僕が間違っているときは叱ってくれたこともありました。優しくて芯が強い直也のことを僕は尊敬しています。どうか、美愛さんと幸せになってください。


 スピーチが終わり、周りから拍手をされた。僕は嬉しいような照れ臭いような、そんな気持ちだ。里美が隣で「真志、よく頑張ったね。スピーチ素敵だったよ」と言ってくれて、僕の心も温かくなる。

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