表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライラック  作者: 遠藤 敦子
1/10

1

 「岩合(いわごう)さん、休憩行ってください」

「了解です。岩合、休憩いただきます」

店長にインカムで指示を出され、僕は休憩室に向かう。専門学校卒業後に今の会社に入社して、2年目となる。販売員という仕事は好きだけれど、22年間生きてきてこれで良いのだろうかという不安もあった。今すぐ辞めたいわけじゃないけど将来どうしようか。何か良いことでもないだろうか。そんなことを考えながら、僕はコンビニで買ったお茶とおにぎりを食べる。

 食事を終えてボーっとしていたとき、他店の女性店員が「お疲れ様です」と言って休憩室に入ってきた。片手にはうさぎパンといちごミルクを持っている。新卒くらいの年齢だろうか。148cmと小柄だけれど、目ばかり大きい女性だ。

「あ、お疲れ様です」

僕は彼女に挨拶を返す。その瞬間、僕は彼女に何かを感じた。あ、この人と結婚するかも。そんな感じのものだ。休憩を終え、午後の業務に戻った。金曜日だったけれど、夕方から夜にかけて仕事終わりのお客様がたくさん来店される。閉店後は少し残業して退勤した。明日もあわよくば彼女に会えないだろうかと思いながら眠りにつく。


 翌日、僕は午前中の業務を終えて休憩室に向かった。あわよくば昨日の女の子とばったり会えないかな、なんて考えながら。コンビニで買ってきたサンドイッチを食べながらスマホで動画を見ていると、昨日会った彼女がいちごミルクを片手に入ってきた。しかし持っているのはうさぎパンではなく、手作りのお弁当だ。

「昨日以来っすね」

僕がそう言うと彼女は、「そうですね」と言って笑っていた。

「いちごミルク好きなんですか?」

僕が聞くと、彼女は

「もうお気に入りです」

と目を輝かせながら笑う。それからはお互いについて自己紹介する。

「まだ自己紹介してませんでしたっけ? 僕、5階のアローズの岩合真志(いわごうしんじ)です」

「私は3階のアフタヌーンローズの渋沢里美(しぶさわさとみ)です」

このやりとりでお互いの店舗とフルネームが初めてわかった。胸元の名札は苗字しか書かれていなかったから。

 その後、僕は渋沢さんについてたくさんのことを知る。高校卒業後に今のお店に就職し、新卒1年目の19歳であること。九州出身であること。料理が好きで、休みの日はお菓子作りもしていること。実家で犬を飼っており、犬が好きなこと。お互いについていろいろな話をしているうちに、休憩時間の終わりが近づいてくる。連絡先を聞けなかったのが心残りだ。明日会えたら連絡先を聞くことにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ