彼女の力
だったら風の力を使えば良かったのかと言われると、そうではない。
確かに、風の力を使えば勝てただろうが、使った時点で自分の負けである。
あの戦いは剣を使った実力の戦い……もちろん、剣と風の力を組み合わせて戦うのも実力だが、そうじゃない……
「…………」
あの時ああしていれば、この時にこうしていれば……その「あの時」「この時」に風の力を使えばしか浮かんで来なくて……言い表せない気持ちが、心を締め付ける。
月明かりが見える空を見上げてみるが、心の闇夜には月の光は届かない。
どうしたらこの気持ちが晴れるのか分からず、呆然と夜空の突きを眺めていたが、
「これで二敗目かしら?」
「……っ!?」
気が抜けている首に手を当てられて、体をびくつかせながら横を見ると、聖女セルロスが隣にいた。
「…………」
呼んだ覚えもない相手、それにあの広い部屋での立ち振る舞いから、こんな所にいて良い人ではないはず。
何でこんな所にいるのかと警戒をして、体が距離を置こうとするが、
「そんな仔犬みたいに、怯えなくて良いのよ」
「なっ……もごっ!?」
セルロスの言葉に、滅入っていた気が震えて、距離を空けるよりも先に、大声を出しそうになるが口を塞がれてしまう。
「元気じゃないあなた、これなら奇跡も必要無かったのかしら?」
「……?」
首に触れていた手が離れると、ヒリヒリしていた痛みが引いている。
何が起きたのかと首を触ってみるが、触ってみるだけで分かるはずも無い。
「大声を出すと、面倒になるから静かになさい」
「…………」
されるがままにセルロスの言葉に頷くと、口が解放されて、
「どうかしら、聖女様の力は?」
「聖女様の力?」
「傷を癒す力よ」
彼女の力を聞かされる。




