自分の力
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夜が更けて、月の光と城壁の上を警備している者達の灯りを見ながら、
「……っ」
ボロボロの学生寮に背中を預けて座り込み、首筋を触る自分がいる。
木剣が通った所が、火傷をしたかのようヒリヒリして、
「引き分けか……」
ヒリヒリする痛みが、今日の事を考えさせる。
人間との戦いは野盗で十分に鍛えていた……はずだった。
風の力を使えば、何でも解決出来るように思っていたが、相手の命を奪わないようにするという戦い方をする場合、風の力はあまりにも強力過ぎて……風の力を併用しながら剣で相手を制圧する術を覚えた。
剣を力任せに襲って来る野盗。
そこに顔面に目掛けて砂を投げ付けられたり、死角から矢が飛んで来たり、数で押し切ろうとして来ては、人の足を踏み付けたり……そういう事をしてくる野盗から剣を覚えた。
風を身に纏わせて砂を矢を弾き飛ばし、数で迫って来る野盗を風で吹き飛ばしてから突っ込む。
頭から突っ込んで相手の鼻を折ったり、鞘を抜いていない剣で相手の肘や膝を叩いたり、時には相手の胸倉を掴んで地面に叩き付けたりと、野盗との戦いが培った剣は……いや剣と言えるような戦いでは無かったのが、今日の事でよく分かった。
あの騎士候補生の剣こそが本当の剣術で、自分のは単なる殴り合い。
命を掛けた殴り合いの経験があったからこそ、騎士候補生の剣を受け止める事が出来たが、攻め切る事が出来なかった。
頭から突っ込めば木剣で首を落とされ、袖を掴みに行ったとしても腕を斬られ、体ごと突っ込んだとしても躱されて背中に一太刀を浴びていた。
「剣術か……」
野盗の剣とは根本が違う剣術、それは、自分が風を纏っているのと同じような、別の力強さを感じさせる。




