終幕
父は、剣から伝わる脈動に、騎士がまだ息があるのを感じるが、足を踏み込んで剣先をさらに押し込むと、敵騎士の体が『ビグンッ』っと力強く跳ね上がってグッタリとする。
それは介錯。
もう死ぬしかない状況で、自分の意志とは関係無く体を震わせて悶える敵騎士への情け。
目出しの部分に突き刺した剣を引き抜くと、敵騎士はそのまま地面にうつ伏せになって倒れる。
本当なら父の勝利に兵士達が勝ち鬨を上げて、敵騎士の兵士達が逃げ出すというのセオリーだが、状況が違う。
勝手に動いた兵士を助けるために、周囲を敵兵士に囲まれている状況。
部下の兵士達は、他の敵兵士との戦いで動きが取れない。
唯一助かる手立てがあるとすれば……父は、兵士の腕を掴むと無理矢理に馬に乗せる。
兵士は、父が何をしようとしているのか理解して馬から降りようとしたが、馬の尻を叩くと走り出す。
唯一の逃げる手立てであった馬を兵士に与え、さらに兵士が逃げ切れる可能性を上げるために、父は敵兵士に斬り掛かる。
一人、敵兵士に挑んだ父がどうなったかというと……
「大丈夫ですか?」
「あっ…申し訳ありません学園長……学園長の動きがあまりにも素晴らし過ぎて、見惚れていました」
その最期の姿は思い浮かべない事にした。
「そうですか」
学園長は、騎士候補生の子の心が、心ここにあらずというのは感じたが、それを指摘するような恥知らずでは無い。
「今年の懇親会は、とても凄い物を見れました。しかし、学園生活は始まったばかりです。この学園を卒業する時には、生徒の皆さんも、彼等と同じように戦える事を願っています」
学園長が喋り終わると、二人は顔を見合わす。
決着は引き分けだが、中身は互いに死んでの相討ち。
「…………」
「…………」
二人は言葉を交わさない、相手をなじる事もしなければ、褒め称える事も無い。
互いに背中を向けると、白線の外へと出て行くと、
「今日は、これで御開きです。明日は、この学園の案内となりますので、ゆっくりと休んで下さいね」
まるで自分達二人を労うように、学園長の声が背中に送られる。




