体術
相討ちの引き分け。
その事に異議を申し立てる者はいない。
それは学園長がそう采配したからではない、
「……随分と器用なマネをしてくれるじゃないか」
「そっちこそ……」
騎士候補生は、自分の横一文字に斬られた腹を擦り、平民の子は擦られた首を擦る……そう少年は、ただ首を斬られたのではなく、騎士候補生の腹を横一文字に斬ってみせたのだ。
学園長の言う通り二人は相討ち……けれど、この場が静まり返っているのは、
「双方とも素晴らしい剣術、体術を魅せてくれました……けれど、そのあまりの素晴らしい動きの前では、相打ちになった結果しか分からない人もいるでしょう」
そう一方的に押し込まれていたはずの少年が、相手を殺す一撃の横一文字をしてみせた方法。
決着が付くまで固唾を呑んで目を見張っていたのに、どうやってその一撃を打ったのか分からずに、静まり返っている。
そんな静まり返る中で学園長はまず、騎士候補生の手を下げて、平民の子の方の手だけを残して注目を集めさせると、
「彼の素晴らしい体術。あの鞭がしなるかのような剣術の前で、反撃が出来ずに押し込まれてそのまま負けると早とちりをしてしまいました」
この子が、どれだけ凄い事をしたのかを説明し始める。
「縦横無尽に舞う木剣、それに対して持ち前の運動神経で耐え抜く、このままで押し切られて負けてしまう……それでも焦る事無く冷静に、不利な状況からの逆転する最高の一手を打つチャンスを窺う」
学園長は伸ばしていた手を畳むと、見えない木剣を持っているかのように両手を握り、
「目にも止まらない剣捌き、神経を擦り減らしながらもある瞬間を待つ」
少年の動きをマネて、騎士候補生の剣を躱す。
一撃目、二撃目、三撃目……目には見えないが、間違い無くそこにいる騎士候補生の剣を捌いていき、
「……ここです!!相手が決着を付ける為の一撃!!喉元を狙った 鋭い突きが飛んで来ます!!」
目に見えない騎士候補生が突きを繰り出す瞬間、
「これが逆転の方法です!!」
繰り出された突きに怯える事無く右足を前に出して、騎士候補生の足元に潜り込ませる。




