勝負の行方は
兵士は騎士として違って、全身を覆うフルメイルを着てなどいない。
それこそ頭に兜だけを被っていたり、半そでのようなチェーンメイルを着ていたりと、全身を守る鎧は着ておらず、体のあちこちに剣を撃ち込める場所が存在する。
(良い判断です……これは一対一の戦いだから、騎士道に準じた鎧を着た状態の戦い方を無意識にしてしまいがちですが、実際は、練習用の簡素な皮鎧。その事に気付けば、彼のように速さを意識した攻撃をしても有効打になります)
学園長は彼の剣術と、ここで群がる兵士を蹴散らす為の技を選んだ事に感嘆する。
もしこれが、重厚な鎧を着た戦いなら、どれだけ叩いたとしても致命傷にならず、有効だとして認める事は出来ないが、皮鎧の隙間に木剣が入れば、それで終わる。
その事は少年も理解しているらしく、皮鎧の隙間に木剣が打ち込まれないように耐え続ける。
「どうやら、先に一歩を踏み出したのは彼の方だったようですね」
実力的には騎士候補生の子も、平民の子も、能力に違う所があるにしても互角。
ただ、先にこの局面に対して、最も有効な手立てを行った騎士候補生の彼の方に分配が上がった。
『ガギィ!!ガッガキィ!!ガギィン!!!!』
「これで終わりだ!!」
『ヒュ!!』
「うっ!?」
鞭のように振るわれていた木剣から鋭い突きが飛び出し、躱し続けていた少年の首の右側を、まるで裂いたかのように突き抜けると、
「そこまで!!」
白線の四隅に立っている先生達が判決を下すより先に、学園長が感極まって椅子から立ち上がって、万歳するように両の手を上げて、
「この戦いは相討ちとして、引き分けとする!!!!」
騎士候補生の彼と、平民の子二人に向かって手を伸ばしたのであった。




