当て人
「……っ!!」
そうなるのは分かっていた……分かっていたからこそ口惜しい。
走り込みをさせられて時間が経ったからといって、全快などしていない。
全ての試合でそうだった……踏み込みが足りない、足が伸びない……体を爆発させようとしても、肺が張ってしまっていて力が出ない。
見ていて分かる……彼だってそうだ。
目の前で戦っている彼は、同じタイミングでぶつかり合ったにも関わらず、先に走らされたせいで、足の力が少し抜けてしまっていた。
同じような背丈で、同じ体勢ではあったものの、疲労という足枷のせいで、普通では押し込めない。
あのままでは、あっちの学生に押し込まれてジリ貧になる……だからこそ、押し込む為に全身全霊でぶつかったのだ。
普通では押し込めないからこその、全身全霊のぶつかり。
疲労が溜まった足、張ってしまった肺……けれど、後先考えない、たった一回だけの全身全霊は出来た。
足に纏わり付く枷を引き千切り、張ってしまった肺を膨張させて、空気を体中に循環させて、起死回生の一撃を狙ったが、向こうの学生は難無くと、その起死回生の一撃を感じって避けてしまう。
その後は見ての通りだ、起死回生の一撃を行う為に無理矢理に爆発させた体は力を失い、そのままの勢いで前のめりになり、それでも、相手からの攻撃を防ごうとして、体を何とか回転させて向き直そうとしたが、ぶつかれてバランスを崩すと、そのまま床に転がり込んだ。
一見すれば猪突猛進、勇み足で情けなくすっころんだように見えるが、彼は最後まで懸命に戦った。
「そこまで!!」
先生達が手を上げると、向こうの学生は意気揚々と戻って行き、床に転がされた彼も立ち上がり、ヨタヨタと歩きながら戻って来る。
(ひどい……)
意気消沈をしているのに、誰からも慰め言葉を掛けて貰えずに、戻って来る彼を可哀想に思いつつ、この懇親会が、何の為に行われているのかを理解し始めてた所で、
「最後の者出ろ!!」
「…………」
自分の順番が回って来た。




