騎士とは
兵士同士なら、気にも留めないような話かもしれないが、この子にとっては触れられたくない記憶。
「そうだな……お前は騎士になりたいのか?」
「騎士に……?」
触れられたくない記憶だというのなら、無理に聞く必要は無い。
本当に聞きたかったのは、この子が騎士を目指しているかどうかという話。
「そんなこと…いや……騎士…か……」
「興味無いのか?」
「……騎士になれたら、そんなに良い事があるんですか?」
強く吹いていた風が弱まって、子供の発していた怒りが消えた。
「良い事か……有り体で言えば地位や身分、街に居を構える事が出来る……戦になれば、部下を持つ事が出来て、騎士同士の戦いで名誉と名声を掛けた戦いが出来る……あまり興味無いか?」
「ピンッとは来ないです」
「だけど、君の親御さんは、そうなって欲しいと思っている。だから、騎士という言葉が気に掛かる」
「…………」
そう、女性が言う通りに、少年の生活を見ていたおじいさんとおばあさんは、騎士になる事を望んでいた。
寝入る前に時々聞いていた「騎士」という言葉、あの子には才能があると……無理強いさせるつもりは無いけれど、出来れば騎士になって欲しいと……騎士というのに、どれだけの価値があるのか、この幸せな生活より、何かあるのかと思っていたけど……
「それは親心だ」
「親心?」
「まだ、君には分からないさ……良い親御さんだ……世の中には、子供すら自分の出世の道具と考えるのもいる。それこそ、名高い貴族に気に入られろと、良い兵士になれと……まぁ、それが現実と言えば現実なんだがな……」
女性は少し寂しそうに顔をそむけてしまった。
「……あなたも、昔は騎士に?」
短い時しか生きていない少年でも、女性が、昔に挫けてしまったのを感じたが、それでも話を続けてしまうと、女性は、顔をそむけたまま笑って、
「……なりたかったが、才能が足りなかった」
「足りなかった?」
「このシゴキをされた時は、私も先生の背中に追い付いて走った」
「それなら」
「けれど、私は息を切らして、膝に手を付けていた」
「…………」
女性の挫けてしまった話で、言葉が詰まってしまった。




