吹き溜まり
当たり障りのない話。
だけど、納得せざるを得ない話。
隙の無い話で、適当に話を終わらせようと……
「それで、お前は人を殺したのか?」
「……っ!!」
適当に話を終わらせようとしたのに、無理矢理に、心の隙間に指を突っ込んで来る。
それは、思い出したくない記憶。
おじいちゃんと、おばあちゃんが、自分達がちゃんと教えなかったばかりに、こんな事をさせてしまったと三日三晩泣いて、その後は一週間も床に伏せてしまった記憶。
「……そんなの関係あるんですか?人を殺したか殺していないか……そんなくだらない事を聞きたいんですか?」
強い突風が吹く。
全てを消し去るような強い風。
記憶の中にこびりついている血の臭いを吹き飛ばそうとするが、臭いは消えない。
悲鳴、歪んだ顔、バラバラに裂かれた肉……何一つ疑う事無くやった事。
どれだけ強い風が吹こうとも、消える事の無い臭いが、記憶の中で吹き溜まりとなって存在する。
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強い風が吹く……まるで、子供の怒りに呼応したかのように……
「そうか……許せよ。私達、兵士は殺し合いをするから、つい忘れてしまっていたが、聞かれて楽しい話では無かったな」
人を殺した事があるかどうかというのを聞いたのは、良くなかった。
兵士である自分は、戦場で殺し合いを生業としているから、忘れてしまったが、初めての人殺しは、目に涙を浮かべながら、吐いたのを覚えている。
今でこそ、その記憶も古びて埋もれて、気にも留めなくなってしまったが、子供の短い時間では、今だにその記憶は鮮明に残ってしまっているのだろう。




