二人きりの時間
もちろん、これだけでその後の人生が決まるという訳では無いが、指針としては役に立つ。
途中から、女性の背中を追えなくなった学生達は、今頃『ヒィヒィ』息を切らしながら、こっちにやって来ているはず。
さすがに、この程度で音を上げて逃げ出す者はいない。
「さてと……お前は、一体どんな鍛錬を積んで来たんだ?」
いつもなら、少しばかりの時間で、誰が一番に来るのを待つのだが、
「あっ…その……大した事はしてないはず何ですが……」
今日は、二番目に誰が来るのかを待ちながら、背中にピッタリとくっついて来た、子供と会話する時間となる。
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(そう言われてもなぁ……)
少年が、女性に追い付く事が出来たのは風の力を使っていたから……ではない、単純に身体能力の高さで引っ付いていたに過ぎない。
(聞きたいのはこっちなんだけど……)
こんな事を言うのは酷いが……あれが本気だとしたら、とてもじゃないが、外の世界では生きられない。
魔虫は仕方無いにしても、同じ人間同士でこれは……野盗を処理する度に思うのが、彼等は決して劣った存在ではない。
住む場所を無くし、行く当てもなく、生きる為には誰かの「生きる」を奪わないといけない存在。
それは、もう知性を持った獣。
獲物を追い立て、罠におびき寄せ、統制の取れた動きで、無尽蔵では無いかのかと思う体力で、的確に殺そうとしてくる。
少年でも、野盗を処理する時は必ず風の力を使うというのに、風の力を持たない彼等が、この体たらくでは……
「……一応確認しますが、彼等は、あれで精一杯何ですか?」
「あの「ヒィヒィ」言いながら、走っていた姿が、手抜きに見えたか?」
「いえ……」
あの必死になっている姿は到底、演技とは思えないし、学生寮の前での気概から感じるに嘘では無いはず。
「……そのですね」
おじいちゃん達からは、自分は普通の人よりも優れた体を持っているとは言われていた。
それこそ、人目に付きそうな所で本気で動く時は、姿を隠しなさいと言われるほどに。
でもそれは、おじいちゃん達が少し大げさに言っていると思っていたけど……本当の事を言える訳も無く、門の所で話をした「何でも屋のおじいさん」の孫で、ずっと町外れの山奥で住んでいた事を話す。




