マイホーム イズ ヤマゴヤ
少年は、スキップするかのように軽やかな足取りで山を駆けていく。
時々目にする獣を狩ろうかと心が浮き立つが、今日は早く帰って来て欲しいと言われているから、目で追うだけで見逃す。
時々目にする獣に目を奪われながらも山を駆け、太陽が正午から午後に落ちようとする辺りで、一軒の山小屋が目に入ると、少年は、軽やかな足で地面を蹴ると空に浮かび上がって、
「そぉぉぉーーーーーーーーれっ!!!!!!」
一回の跳躍で、どれだけ跳べるかと遊びながら山小屋へと跳ねる。
脚を、体を風に乗せて宙を飛ぶ、今までは後一歩の所の、山小屋の前で足が付いてしまっていたが、
「やったね!!」
今日は新記録が出た。
今まで見たいに山小屋の前で失速して、二歩目の足が地面に付いてしまう事無く、一回の跳躍で辿り着く。
「ただいま!!」
山小屋の前に降り立った少年は、自分が帰って来た事を伝える「ただいま」を大きな声で出すと、
「あらあら、お帰りなさい」
年相応の白髪の老婆が窓から顔を出して、少年の帰りを向かい入れてくれる。
帰りを迎え入れてくれる老婆、それに対して少年は二カッと笑い。
「見て見て!!こんなに薪を取って来たよ!!これだけあれば、当分は生活に困らないよ!!」
自分の背中を追って来た山盛りの薪を見せると、老婆は目を細めて笑う。
「ふふっ…本当、これだけの薪があれば心強いわ」
「うん!!薪小屋に入れて乾燥させておくから」
「ありがとう……いつも、ありがとうね」
息子が集めて来た薪の量で、どれだけ自分が愛されているかを知る事が出来て、老婆は心から喜びを覚える。
少年は、老婆が喜んでいるのを喜びながら、薪を山小屋まで移し、
「じいちゃんは、どうしたの?」
もう一人の、自分の事を迎え入れてくれる老人がいない事に、頭を傾げるのであった。