寮へ
藁にも縋るとはいうが、無理難題な依頼をしてしまったと町長は後悔していたが……
「ちなみに何だが、君のおじさんは元気なのかい?」
「…………」
「そっか…それは良かった」
子供が頷いたのを見て、あの依頼が見事に達成されたのを知ると、自然と笑みがこぼれていた。
男性は、一度は精巧な偽物と判断した書類を、本物だと改めて受け取り、
「ようこそリヴィンに、私はイード、君を歓迎する」
手を差し出して握手を求める。
「僕は……」
差し出された手を握り返し、自己紹介をしようとしたが、
「イード先生、鍛錬場においで下さい。審判の準備をお願いします」
「あぁ、もうそんな時間か……後は任せるよ」
「はい…その子は?」
「もう書類は貰っているから大丈夫」
「分かりました」
イードと呼ばれた男性は手を離すと、そのまま受け付けから離れてしまう。
「あっ…あの……!!」
「君はこっちね」
離れていくイード先生に声を掛けようとしたが、代わりに来た女性が案内看板を指差すので、そっちの方を見ると、
「学生寮……」
看板には学生寮と書かれている。
「そう、これから君が住む場所。各人にベッド、机、タンスが用意されているから好きなのを選びなさい……頑張りなさい」
「……はい」
何とも素っ気無い説明と思いながらも、言われた事を覚えながら、案内看板の示す方向へと歩き出す。
案内看板は、大きな壁の横に等間隔で設置されていて、案内看板に従う形でヒョコヒョコと歩いていくのだが、
「歩くんだなぁ……」
山の中を縦横無尽に飛び回っていたから、体力的にはキツくはないのだが、不自然に歩かされる。
すぐ横には大きな建物があり、所々に建物に入るためのドアがあるのだが、案内看板は先に進むように案内している。
どこのドアから入るのだろうと思いながら、案内看板に従って歩き続けると壁の端の方へと辿り着き、そこには横向きになっている案内看板があって、案内看板が向いている横の方を向いてみると、
「あっ、あれか」
ずっと…ずーーーーーーーーっと先の壁の所に、いくつかの建物が小さく見えた。




