門の先で
何でポケットの中に小石が入っているかという話なのだが、これは意図的に、常にポケットの中に入れている。
というのも、森の中には時々野盗が住みつく事があるので、その退治をする時に小石を使う。
初めの頃は、野盗退治でコッソリと風の力を使って処理していたのだが、それを知ったおじいちゃん達から、ひどく泣かれてしまったので、それ以来、
(狙うはこめかみ!!)
『ガッ!!』
「…………!?」
小石を弾き飛ばして、相手を卒倒させる術を身に付けていた。
無礼な男性は、声を上げる事も出来ずにその場に倒れ込むと、
「先生!?」
「医者だ!!医者を呼ぶんだ!!」
門をくぐろうとしていた者達が、男を介抱する。
(死にはしないさ)
たかが、こめかみに小石がぶつかっただけ、その程度で死んでいては人間はとうの昔に滅びている。
素直に、気が赴くままに、無礼を働かれた事への仕返しをして、ルンルン気分で指定された方の門の方から学園の中に入ると、
「そこの君、ちょっと良いかな」
「……何でしょうか?」
また声を掛けられたのだが、今度は優しい声を掛けられて、柔和な笑顔がこちらに向けられている。
(気付いた……?)
小石を飛ばしたのは、門の外でやった事なのだから、この男性が知る由は無いはずで、また、小石をぶつけた所を見られていたとしたら、こんな優しい雰囲気で声をかけられる訳が無い。
なんでまた声を掛けられたのかと怪訝に思ったが、、
「新入生の子は、こっちで受付をして貰っているんだ。さぁ、こっちにおいで」
男性がこっちにおいでと、手招きをして呼んでくれる。
「あっ、はい!!今行きます!!」
「うん、元気なのは良い事だ。さっ、ここに出身地の紙と入学手続き、それと学費を出してくれるかい」
テーブルの前に立つ男性に呼ばれて行き、促されるままにバッグの中に入れられていた物を出すと、男性はそれを一つ一つ確認して、問題がいないことを確認する。
町や村から発行される身分証、学園への入学推薦状、それに渡された学費が間違い無いか丁寧に調べるのだが、
「君は……あそこの町の出身者なのかい?」
「あそこの?」
「書類には不備が無いから問題無いけど…出身地が私と一緒なんだ……」
書類をチェックしていた男性は、目の前の子に身に覚えが無かった。
時々の里帰りではあるが、そんなに広い町では無い。
職業柄、今度入学して来る子供はどんな子だと見てしまう癖があり、
「ごめんね。書類とか学費も問題無いんだ……だけど、聞かないといけない事なんだ」
その職業柄のお陰か、目の前の子は見た事無いと断言出来た。




