学園は目と鼻の先で
「とても素直…まるで動物のよう……感情をストレートに見せてくれる」
「動物ですか……」
「えぇ、動物みたいっていわれると怒りたくもなるでしょうけど、動物の様に純粋な人は、そうはいなくてよ」
「あっ…大丈夫です……犬も馬も可愛いですよね」
「ふふっ……あなたも可愛いくて」
窓に映る彼女は満足気で、こちらを楽しそうに見ている。
彼女に、どのような生い立ちがあるのは知る由も無いが、それでも、この時を楽しそうにしているのなら、それで良いのかもしれない。
話が終わってみれば、話し掛けられていたのに、話を聞いていた。
話を聞いて貰った彼女は、満足して窓の方に視線を動かし、
「御覧なさい。あそこが、あなたの探していた学園」
「あれが…学園……」
彼女が向けた方の視線に合わせてみると、大きな建物が見える。
この道中で見て来た建物より、大きな建物、大きな敷地。
村で見た役所なんかとは比べ物にならない建物。
この学園という場所だけで村の二つや三つが納まってしまいまそうで……おじいちゃん達から教わっていた学園は、自分が想像していた以上であった。
馬車の窓から、しげしげと眺めていると、
「馬車を止めて」
「かしこまりました」
彼女が、馬車を止める。
学園まで連れて行って貰えるはずだったのに、何事かと思って振り向くと、
「あなたとの会話は楽しかったわ、ここからは一人で行きなさい」
彼女の顔からは笑顔が消えていた。
何も怒っているとかでは無いが、無表情な表情はとても冷たくて……
「あの子が付いて来ると思っているのなら心配しなくて良いわ。あの子は賢いの、さよならを言えば、離れるわ」
こちらが何かの質問をするのも、有無を言うのすら許さない。
「……ありがとうございます」
「気にしないで、誰かに優しくするのは務めですから」
最後にお礼を伝えると、言われるがままに馬車から降りて、
「……ありがとう、君が僕に懐いたのは匂いがしたからだよね」
『ブルルゥゥ……』
別れの挨拶をしようと横に立つと、馬は頬を体に擦り付ける。




