親切な……
馬車の扉を開けて声を掛けてくれる女性は、自分と同じ銀髪でフワフワとしている。
魔虫相手なら、こんなにも近付かれても気付けない等あるはずも無いのだが、時間を気にし過ぎて、気がそそろになっていた。
「ごめんなさい、邪魔でしたよね……そうだ、あの申し訳ないんですが、学園の場所分かりますか?」
馬車が進むのを邪魔してしまった事を謝りつつも、声を掛けられたことはチャンスだと、学園の場所を聞くと、
「だったら乗りなさい」
「えっ?」
「私もこれから、学園に行くのよ」
女性は、馬車の中に乗って来るように誘ってくれる。
「あっ…いえっ……場所だけ教えて貰えれば、一人で行けますので」
「あらっそう?私としては乗って貰った方が助かるのですけど」
「それはどういう意味で?」
「すぐに分かるわ。学園は向こうよ」
あまり人と関わるべきじゃないと思い、折角の申し出を断ると学園の場所だけを聞くのだが、意味深な事を言われて、
「向こうですか……?あなたは、なぜここに?」
「さぁ、何ででしょう」
「……ご迷惑をお掛けしました。学園の場所を教えて下さって、ありがとうございます」
しかも、学園があるという方角は、横の方を指差している。
自分は道が分からないから、こんなデタラメな方に来てしまったが、この女性は学園の場所を知っている。
道に迷っている自分の為に、ここまで来たというのはちょっと考えにくい。
何か自分に対して、気になる事があるのかと警戒しながら、馬車から距離を取って学園の方に足を向けると、
『ガラガラ……』
「んっ?」
馬車も、こちらに合わせて向きを変える。
「…………」
『ガラガラガラガラ……』
気にしないようにして、足を前に出して進むのだが、馬車がくっついて来る。
「…………」
『ガラガラガラガラ……』
「………………」
『ガラガラガラガラガラガラガラガラ…………』
「……………………ねぇ」
『ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ…………』
「もしかして……懐いてる?」
自分が進むのに合わせて追って来ているのは馬車ではなく、馬車を引っ張っている馬の方であった。




