貰った物
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山を走り、山を駆けて、少年は舞う。
誰よりも早く、誰の目にも止まらずに。
息を切らす事も無く、軽やかに宙を飛びながら、
(また帰って来るから……)
自分を育ててくれた人達がいる、山小屋の方を振り返る事無く走り抜ける。
最後の食事は、いつもと変わらなかった。
いつもの通りに、おじちゃんとおばあちゃんと自分で、食事が用意されていたテーブルを囲む、いつもの光景。
いつもの今日あった事を話して、お互いの体を心配して、今日という日が無事だったことを感謝して……だけど、一つ違ったのは、いつもの明日の話をしなかった事。
どこの山まで行って、何を獲って来て、何を採って来るか、山小屋の修繕は必要か……そんな他愛のない話をしなかった。
話をしたのは明日からずっとの話、学園では同年代の子達と一緒になるから友達が出来れば良いと、困った事があれば、周りに助けを求めなさいと……そして、いつか立派な騎士になって欲しいと。
「ここまで来れば良いかな」
最後の会話を思い出しながら、山を駆けていると遠目に街が見える。
夜だから街全体の景色は見えないが、それでも、夜を灯す灯りが動いている。
それは夜の見張りをしている兵士が、動いているという証拠。
少年は、自分が辿り着くべき街付近まで来れたと、その辺で寝っ転がる。
後は、街の門が開くタイミングに合わせて、早朝に目を覚まして歩き出せば良い。
後は目をつぶって、朝日が昇るまで眠れば良いのだが、
「エルフの秘石か……」
おじいちゃんがくれた、エルフの秘石をマジマジと眺める。
あの時、老人に見せた秘石は偽物で、あれはおじちゃんから渡された鉱石。
鉱石に風の力を込める事で、本物の秘石に見せかけた。
なぜ、そんな事をしたのかといえば、
「風を操るのには、影響しなかったなぁ」
少年は、エルフの秘石を使わなくても、風を操る事が出来たから。
魔法を使えるのはエルフか、エルフの秘石を持つ者だけ……それなのに、少年はどちらにも該当しない。




