黒い声を持つ者と、無色の声を持つ者
赤い声を持つ彼とお喋りをしている間に、女神様が、もう次まで来ていた。
女神様は隣の子の力を、調べて力を与えようとしたのだが、その子の声が暗かった。
黒くて…暗くて……心臓を握り締める悪夢を見た時のような常闇の底の色。
その子が何かを話しているのは分かるのだけれど、月も、星の光も無い闇に包まれたかのような黒い言葉で、何を言っているのか聞こえなかったけど辛うじて「統べる」という言葉が微かに見える。
恐ろしい声に、女神様も戸惑っている、力を与えてしまったらどうなるのかと、恐れている。
懸命な判断をするなら、黒い声を持つ者には力を与えてはいけない、女神様なら正しい判断をすると信じるけど、女神様は黒い声を持つ者から目線を離し、少し間を空けてから「分かりました」と言って、力を与えてしまう。
なぜそんな事をしてしまうのか……異質な力は、明らかに不穏を呼ぶ。
黒い声を持つ子は、力を貰えた事に喜びほくそ笑むと、口の端しから黒いモヤが漏れ出す。
それがいけない事だと分かっているのにはずなのに……分かっているから、女神様は苦悩しているのに……自分がした事なのに、見て見ぬふりをして僕の所へと来る。
女神様の声には疲れが見えて、自分がした事に悩みを見せているが、それでも、優しい声で僕の声を色を見せてという。
そんな戸惑いを見せる女神様に、なんて声を出せば良いのか分からずに、声を漏らす事しか出来なかったが、女神様は「あなたは…そうなのね……力を与えましょう」僕の見えない色に、不思議そうな顔をしたが、何かに気付いたのか力を与えようとしてくれる。
色の無い声を持つ僕でも力を貰えるのは嬉しい事だけど……隣の黒い声を持つ子は、こっちの事等気にも留めない。
それはきっと、僕の貰う力等、相手にする価値が無いから……声を出さなきゃ。
もう力を貰えるのだから、黙っていれば自分に相応しい力を貰えるのに心が叫ぶ、自分で言わないといけないと。
女神様が力を与えようと手を差し出して来るけれど、心を震わせて声を出す……「最強の力を下さい」と。