風が去って、馬が駆けて
「金貨を貰うより、よっぽど報奨金になるぞ」
「でしたらお返しします。困った人を助けただけですから」
「それは礼儀に反するな。それは施しを受けるだけで喜ぶアホだと相手に言っているようなものだ……まぁ、そういう恩知らずなアホもいるがな」
「……でしたら」
マントを羽織った者は、手にした紋章の金貨をしまうと、老人も満足そうに頷く。
「それじゃあ、改めて甘えさせて貰おうかな……助けを呼んで来てくれないかい?」
「分かりました。すぐに呼んで来ますので、待ってて下さい」
マントを羽織った者は、馬車から飛び降りると、周りの木々をの葉を『カサカサ』鳴らして走って行く。
老人は、その後姿を馬車の中から見送ると、その姿はすぐ様に小さくなって見えなくなると、葉が擦れる音が止む。
「風を纏う子供か……」
雰囲気で何となく感じた。
風を扱う者だと思ったのは、この身に風を受けたから、マントを羽織った者が子供だと思ったのは、幼い声から。
「どんな子なのだろうか」
老人は、助けが来るまでの間、馬車の中で物思いにふけるのであった。
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マントを羽織った者が去ってから数刻経った頃、遠くから馬が大地を蹴る音が聞こえる。
幾つものの馬が駆ける足音。
「随分と、大慌てで来てくれたものだ」
十人位だろうか?
街道に魔虫が出て、貴族に被害者を出したとなったら、彼等の面目も丸潰れなのも考えると、決して大げさな事ではない。
次第に近付いて来る、馬の蹄の音に紛れて、
「馬車があったぞ!!副隊は周辺を警戒しろ!!私の隊は救助だ!!」
「了解!!前に出ろ!!お前は横に付けろ!!」
馬車の窓から彼等の動きを見ると、洗礼された良い動き。
副隊の方は素早く馬車の周りを囲んで陣形をとり、指揮を執っていた者は馬の上から、馬車の上に飛び乗り、
「御無事ですか!?トルート様!!」
「あぁ、私は無事だよ。苦労を掛けたね」
「そんな事はございません!!ロープを降ろしますので、体に巻き付けて下さい!!」
「頼むよ」
老人の……トルートの安否が、安だったことに胸を撫で下ろしつつも、馬車の中にロープを投げ入れて救助するのであった。




