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意思を持つ風の心は?

体が風に押し上げられる感覚。



風が吹き荒む台風の日でも、どうしても外出しなければならない時の様な、風に押される感覚。



服をパタパタとはためかせながら、宙に浮くという事は、上から迫って来ている魔虫に近付く事になる……と思ったが、この風は私にも味方をしてくれる。



私が馬車の中で浮くように、魔虫は馬車の中に吹いた突風によって吹き上がって外に飛ばされる。



風によって外に飛ばされた魔虫は羽を広げて、バランスを取ろうとするが、さらに横殴りの風が吹いて吹き飛ばされる。



それに対して自分はといえば、馬車に吹いた突風がゆっくりと治まり始めると、まるで抱き抱えられているかのように、ゆっくりと下に降ろして貰える。



まるで風に意思があるかのように老人を守る。



「何が…起きているんだ……」



足が馬車に付き、手を床に付けると、自分が生き長らえている事を実感する。



いくら助かりたいと願っていたとしても、こんな都合の良い風が吹く訳が無い。



「まさか?」



老人は自分の身に何が起きているのか理解するためにも、前のガラス窓から外の様子をうかがう。



先程まで、もう一匹の魔虫がガリガリと壁を齧って壁越しにいたのだから、危険な行為なのだが、それでも外を見ると、



「あれは……」



マントをおおった、誰かがこちらに向かって来ている。



助けに来てくれた……と喜ぶのは少し気が早い。



こちらへと来るマントを羽織った者を、魔虫が襲い掛かる。



カマを大きく掲げて、羽を大きく広げて、魔虫という圧倒的な存在を誇示して襲い掛かる。



普通の兵士なら、この姿を見ただけで戦意喪失する者がいるというのに、マントを羽織った者、踏み出す足を一歩も乱す事無く接近して、前に手をかざすと、



『ヒュッパン!!!!』



『ブシャァ!!!!』



魔虫の大きく広げた羽が切り落とされて、大きく掲げたカマが切り落とされると液体が噴き出る。



『キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!』



馬の様に大きく育った魔虫。



そこまで大きく育つには、多くの命を奪って来ただろうに、いざ自分が狩られる側になると、途端に首を左右に振って苦しみに悶える。

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