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風が吹く

上から迫るカマですら手一杯なのに、いつ破れるか分からない壁横にすら集中力をかないといけない。



何度も刺し込まれるカマを剣でさばき、耳は音を聞く。



精神を削って、この時間稼ぎをしたからといって、窮地を脱する算段があるのかと言われると無いのだが、それでも死にあらがう。



もう、魔虫のどっちが先に魔の手を伸ばすのか早いかという状況であるが、馬車に閉じ込められた老人は、必死に抵抗し続けていると、



『バッツギィッ!!』



耳に一段と大きな音が聞こえて足元を見ると、横壁に穴が空いてしまっている。



それは決して大きな穴では無いが、カマを刺し込むには十分な大きさで、



『ガッリィ!!』



老人の体を切り裂こうとカマが飛び出して来る。



「えぇい!!!!」



耳で警戒してお陰で、魔虫の攻撃は不意打ちにはならずに、避ける事が出来たが、



『バッツギィッ!!』



「うぉっ!!!?」



上からの追撃を避けようとして、馬車の中で転んでしまう。



それは魔虫が連携してやった事なのか定かでは無いが、



「死んだ……」



上に乗っていた魔虫が、自分が転んだのを見て、窓をズタズタにして広げた穴から、細い体を突っ込んで来る。



とげが付いたカマ。



それが肩に食い込めば、そのまま持ち上げられる。



そうすれば、位置的に考えれば頭から食われる事になるだろう。



(苦しまないで死ねるか……)



肩に食い込む痛みを我慢し、頭を食われる恐怖を耐えれば楽に死ねる。



(せめて…言葉を遺せればな……)



最期の心の名残りは、孫娘に言葉を遺せない事。



魔虫相手では言葉が通じないので元から意味が無く、言葉を遺せたかもしれない御者は魔虫の腹の中。



(いつまでも…生き続けてくれ……)



これから死んでいくからこそ、孫娘には生き続けて欲しい……孫娘には自分と同じような死に方をせずに、幸せに生き長らえて欲しいと願いながら、最期の時を受け入れる覚悟決めると、


『ボッヒュウッ!!!!』



「なっ…なんだ!?」



突然、馬車の中に突風が吹くと体が宙に浮いた。

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