声の色
そこは暗かったが、少しだけ明るかった。
夜の暗い部屋に、ロウソクが灯されたかのように、少しだけ明るい場所。
ここがどこかは分からないが、声が聞こえる。
そこには自分以外の子がいて、ある人が一人一人に優しく声を掛けている。
それは女神様だったのだろう。
優しい女性の声を掛けられた、他の子達が、色の付いた言葉を返す。
少し距離が離れていて、何を喋っているのかは分からないけど、それでも、色が見える。
黄色や水色、白色に緑色と、十人十色な言葉の色が見えた。
みんなが、色のある言葉を発してるから、自分の色が何色なのか試しに小声で喋ってみるけれど、色が無い。
何回も……何回も試しても色が無い。
自分だけ色が無い事に焦りを覚えて、大きな声を出せば色が出るんじゃないかと思って、大声を出そうとすると、隣の子が話し掛けてきた。
「あの人が、俺達に力をくれるんだな」と、隣の子が赤色の声で話し掛けてくる。
焦っていた僕は彼に「僕だけ声に色が無い」と、泣きそうな声で返すと「お前には、まだ決まった物が無いからじゃないか」彼は優しく赤い言葉を返してくれる。
けれど、焦っていた僕は「それは僕だけ無能ってこと……」彼の言葉を悪く捉えてしまう。
みんなにだけ色があり、僕だけには色が無い……それは、僕だけが劣っていると……
なぜこんな事に……なぜ僕だけが……
そんな事を思っていると、僕の心を見透かして「そうじゃなくて、無限の可能性があるってこと」彼がそう言ってくれる。
無限の可能性……その言葉の意味が分からずに、彼の言葉に心を傾けると「あいつ等も、俺も、もう色が決まっている……だけど、お前だけは決まっていない……それは、お前はどんな色にでもなれるって事だろ?」とても優しくて、温かった。
自分の中の焦りが溶かされて、温められた心がホッとして不安が消える。
不安を消し去ってくれた彼に、お礼を言おうとして、名前を聞こうとしたが、心が怯えた。