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魔憑きの少女は女誑しの捕縛師に愛される  作者: にわ冬莉


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15/16

捕縛

『……レィ』

 遠くから、誰かの声。

『リ…レィ……』

 名を、呼んでいる。

 誰の?

『……っかり…ってろ!』

 怒っているような、声。

 どこかで聞いたことが?

 いつ?

 ……誰?

 イイノヨ ナニモオモイダサナクテ

 別の誰かが言う。とても優しい、心地よい声。ふわりと温かく体を包んでくれる、誰かの声がする。

『…リ…レィ!』

 ミミヲフサギナサイ オマエハモウ ネムレバイイヨ

 …眠……れば…?

 ソウダヨ ツライコト スベテワスレテ ネムレバイイヨ

 辛いことを、忘れて……。

 すう、と心地よい睡魔が襲う。このまま、暖かな闇に囲まれて眠れたならどんなに幸せだろう。このまま身を任せて……、

『やらせるって約束だろ!』

 ドクンッ

 目が、覚める。

 意識が鮮明になり、自分が誰なのかを思い出す。そして、声の主も……。

「カリム!」

 パチリ、と画面が切り替わるようにして視界が開ける。暗い、闇の中に浮かび上がる影。異様な匂いに、驚いて周りを見ると、そこら中に巻き散らかされた肉片。

「……なん…だ、これは?」

「リレィ!」

 闇の向こうから、影が歩いてくる。その動きが少しぎこちなく、リレィは違和感を覚えた。

「カリム、これは一体……、」

 空が暁を迎える準備を始めた。薄紫のグラデーション。闇色が、薄れ始める。

「……っ!」

 リレィは言葉を失った。

 闇の中からその姿を現したカリムは、変わり果てた姿をしていたのだ。

「……カ…リム?」

 足が震える。

 一体なにがあったのか、リレィには何もわからないのだ。

「リレィ、これを」

 カリムが差し出したのはリレィの剣。柄の部分に赤い石が埋め込まれている。

「魔剣、レイシェラだ。……お前の分身だぞ」

 そう言って微笑むと、その場に崩れ落ちた。

「カリム!」

 駆け寄り、その体を抱き起こす。体中が魔物の血で汚れている。そしてカリム自身も体のあちこちに傷を負っているのだろう。足元には大きな血溜り。

「何があったんだ? 一体どうしたんだ、カリム! ……まさか、私が、」

「……バーカ。俺の仕事は無事成功したんだよ。俺が作った剣、大切にしろよな」

「わかった。わかったから、もう喋るな!」

「……生きろよ」

「え?」

「生きろよ、リレィ。……約束だぞ」

 朝焼けが、辺りを照らす。

「何を、」

 リレィは頷くことすら出来ずにただカリムを見つめていた。もう、どうしていいのかわからなくなっていた。

「……頼む、私を置いていなくならないでくれ」

 懇願する。

 もう、失いたくない。何も……、

「……お前はもう大丈夫だ。そうだろ?」

 リレィは唇を噛み締めた。

 このまま悲しみに身を任せてしまったら、悲しみが現実のものとなりそうな気がして怖かった。だから、一切の感情を、不安を閉じ込めた。何事もなかったかのように振舞う。

 そんなこと、あるわけがない。

 カリムがいなくなるなんて、そんなこと。

「……知らなかったろ……」

 苦痛に歪めていた顔を少しだけ、和らげてカリム。

「え?」

 リレィは心の動揺を一切押し隠して、カリムを見ていた。

「俺、お前の事、好きだったんだぜ……」

 ズシリ、と胸に響く。

「……過去形なのか?」

 ふっ、と笑って見せる。

 カリムは、リレィの腕の中で、深い眠りに落ちたのだった……。

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