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元人形少女は神様と行く!  作者: 餠丸
1章~テュワシー~
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22nd.男の企み


 校長室にて、シエラとスティーが校長の正体を知った同じ頃合いにて、彼がアリアへと声を掛ける。


「アリア教頭……」


 校長の呼び声に、アリアは「何ですか?」と返事をした。

 いつもは、そこから厭らしくも卑しい言葉がやってくる――夫が居るから誘いには乗れない、夫一筋なので貴方には興味がない。今回も、そんな言葉を発する準備が整っている。

 またか……また性的誘いごと――溜息を吐く。


「私に……何か隠している事など、ありませんかね?」


 目を見張る。

 性的な誘い文句でも、自分の体つきを示唆するような卑猥な言動でもなく、こちらの事情を探る口振り。


(悟られている……シエラ様とスティーさんの事を?)


 アリアは、誰にも言っていない――デュグロスの犯人の事を。

 彼女は自分の考える能力が人よりも低い事を自覚している――無論、人間からすれば人並み以上なのだろうとも、嘘を吐くこと何かを推理する為に何かを利用する泳がせるという頭脳を用いることは苦手。

――故に、何も言及しないことを断固として、悟られないように生徒と仲の良い教頭として過ごし、考えずにいたというのに。


(悟られた……!)


 夫より「何かを疑われたくなければ、堂々と、何も考えず日常と同じに行動する事が良好」と教えられ、それを守り過ごせていたはず。


(どこで?)


 思い当たる節は、無い。

 シエラとスティーとの関りも、業務以外では殆ど無かった――疑われる要素は……。


(いや…………彼がシエラ様とスティーさんの事について、悟った訳ではないはず)


 ここは、別のことだ。


「すみません。先日、校長先生が楽しみにしていたであろうお菓子を少々、口にしまして」


 これは、嘘ではない。

 先日、校長に用がありこの校長室に入った所彼が居らず、卓上に置いてあった高級菓子を一つ食べてしまった事がある――黙っていたが、事実を隠すに事実を述べることで場を切り抜ける。アリアは自分の知能指数が上がったのではないかと自画自賛した。


(対価だとか言って、猥褻な言動をされるかと思い、言っていなかっただけなんですが……)


 どうだ、効果はあるか?

 アリアはチラリと校長の顔を見た。


「何という……生徒では無かったんですか……私の高級菓子を……」


 やや、落胆している。


(良かった……)


 貴方、やりましたよ……ニットウに帰ったら褒めてください――今はその場に居ない夫を思い浮かべながら、アリアは思った。


「まあ、いいでしょう。対価として何か……」

「新しいものを買っておきます」

「ああ……うん」


 食い気味に返され、校長はしょぼんとしながら返事をする。

 その真意は、疑い一色。


(白か……? 普段の生徒との関りも見ても、あの二人との関りは無しだ――限りなく白に近いが、灰色でもある)


 気付いている――シエラとスティーのことを。

 二人の編入の時期が怪しいという事に、ではなく――普段のシエラとスティーの行動だ。

 特にスティー。彼女はよく襤褸が出ている。


 ――『スティー君。調べものかね? 感心感心』

 ――『はい。魔族についてを……』

 ――『おや、魔族? どうしてかね。この街に居ればそんな物騒な種族、出会う事無かろう?』


 最初は、容姿体つきに目を引かれて話し掛けただけだったそのやり取り――さりげなく体に触れて、若い肉体を堪能しようかと思っていただけ。


 ――『色々な種族の戦い方とかを、学んでおこうかと』

 ――『それで、魔族?』

 ――『魔族は戦闘技術に秀でた種族が多いと聞きました。だからこそです』

 ――『早めに強くなりたいのか……』

 ――『はい!』

 ――『近いうちに、戦う機会があるのかね……?』

 ――『そう……ですね』


 彼女は――冒険者。それも、所在不明の強姦魔デュグロスを捕まえるべく動く者たちの一人。


(徒党共のうち、一人――――要はあの男の仲間)


 ドルイドに、彼は言っている――関係者の全てを殺す、と。


(そう言えば今日は確か、五人で出掛けてるって話だな……)


 予想だが、恐らく今日に、自分の正体が知られてしまうのは確かだ。五人の中に男子生徒アレンが居る――彼の実家は大貴族セラー家。長くこのカグマンに滞在する彼の貴族の当主はやはりと言うべきか頭が切れる。


(邪魔は排除すべきだな)


 先程、一つ鎌を掛けてから汗をダラダラと流しているアリアも怪しいが、あの二人を排除できればどうでもいい。

 遂行した後、望みのニットウへの異動をさせてやればそれで脅威にはならない。


(片目の恨みと、体の傷の百倍は苦しんでもらう)


 蹂躙し、犯し、心を抉る。

 心を抉るのを先にやってもいいかもしれない――卓上に置いてある書類を手に取った。


「校長、それは……?」

「迷宮探索の実習に私も行ってみようかと思いましてなあ……いやはや、私も久し振りに汗を流すべく、戦闘に加わりたい。なので、校長の業務を一旦休止するための書類です」

「貴方が……ですか?」

「お腹を見て判断するのは止めて頂きたい。戦闘技術においては少しばかり自信がありますのでな」


 ――学校を回り見る際に、シエラとスティーが同教室の生徒たちと親睦をかなり深めているのを見た事がある。

 男女隔てなく、友達に恵まれていて幸せそうな表情をしていた二人――魔術理論研究部の面々とも親睦を深めているとも聞く。

 シエラは神――何の神かは知らないが、あの女神は雰囲気からして様々な神や天使、人間からも好かれていることだろう。犯し、拷問し、加護がある分自分で命を絶たせ、首を切り、生首を神々や天使、そして冒険者に見せつけ己の力の誇示とする。

 神の身体は死後も腐らないと聞く――死人には興味の無い魔族の一端であれ、神とあらばどうだろうか。


「……シエラさんとスティーさんは、優秀な生徒と聞きますねえ」

「え? はい、そうですね」

「ふむ……教師たちの間で今、編成について議論がされていまして。彼女たち二人を先に行かせてみるという提案があったのですが、アリア教頭はどう思われますか?」


 シエラとの決闘を思い出し、校長の質問にアリアは何の疑いも無しに「行けるのではないでしょうか」と口にした。


「ふむ……ではアリア教頭、貴女はシエラさんとスティーさんの二人について行ってあげてもよろしいですか。最先行組です」

「私は問題ありませんが……そもそもスエズ迷宮は五階層まで魔物もほとんど出ないではないですか。最先行組も何も…………」

「まあ、確かにそうですが……スエズ迷宮と言えど、万が一ということがあります。安全だから、魔物が出てこないから、それではすぐに全滅してしまいます。例年通りとはいきませんし、今回は最先行組を行かせ、安全が保障されてから全生徒たちを向かわせましょう――魔物が大量発生するなどの異常があれば、すぐに迷宮から出てきて戻ってきてください」


 ――ありきたりで、適当な言い分。

 多少真っ当な事を含ませて言えば、この頭の悪い教頭は納得してくれる。


「わかりました」

(同族の恥――――てめえも心抉ってやるよ。夫に見せたら、夫はどんな顔をする? アイツみたいに復讐してくるか?)


 不本意ながら、目の前の女は――強い。今の状態では敵わないことは分かっている。


(心を揺さぶられた奴は、弱くなる――――どんなに強い奴でも、最後には「助けてください」とか泣きやがる……)


 弱くなった所を……叩く、否、蹂躙し犯す。


「ところで校長……気持ちの悪い笑みは控えてください」

「(おっと……)すみませんね。楽しみなもので。結構先の出来事とは言え、この年にもなると時間をすぐに経つ……今のうちに運動不足を解消しておきますか」

「……そうでしたか……すみません。てっきり女性関係のことでニヤついているのかと」

(馬鹿が――やっぱ頭足りてねェなァ……)


 こんな頭の悪い女でも、教頭になれるんだから、世も末だぜ――――男の心は、いつだって黒い。


(暫くは女犯すのも我慢だな……長期休暇でも取って、安全な場所で、迷宮でお友達共を殺す準備でもしながら、欲求も為に溜めて……楽しくなってきたぜ……)


 ――――神も案外、大したことはない、な。


(いや――――殺すのはダメだな。別の手段を考えるか)


次回から、服装や料理名などは横文字を辞さないスタンスで行こうと思います。

いや、袴とか裙子とか? 実際に着ている登場人物が居るなら良いとして、自分でも考えるの面倒臭くなってきたし、自分でもわかりにくい。ズボンに関しても「履き物」だと靴だって履き物じゃん?

もう……変なこだわりは捨てた方が良いですよね的な結論に至りました。

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