表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の吹くまま、気の向くまま。  作者: sugarpot
【どきどきパリ篇 20XX/08/13-20XX/08/18】
22/114

車窓の虹【20XX/08/16 モン・サン・ミッシェル-レンヌ-パリ】


モン・サン・ミッシェルはものすっごい観光地だ。

土産物屋がぎっちり並んだ細い道に、満員電車並みに人が溢れてる。

道をずっと登ってゆくと入場料を払うところがあって、

そこから修道院の中が見れた。入場券を買うにももちろん長蛇の列。


中には旗を持った観光ツアーの人たちがいっぱいいた。

人種言葉入り乱れ状態。ヨーロッパ系だけじゃなく、

インド・中国・韓国・日本、なんでもアリ。

観光案内の紙もあらゆる言語を取り揃えてある。

日本語ももちろん常備。すごい。さすが観光地。


テラスから遠浅の海をぼけーと眺め、

列柱廊の壁際のベンチみたいなとっかかりに座ってぼんやり中庭を眺め、

時々日本語のガイドさんの声が聞こえると、

少し離れたとこから聞き耳たてたりして、ゆっくり回った。

古い建物はかっこいい。


雨がさわさわ降り出して一気に気温が下がる。

雨は強くなり弱くなり一時やみ、時々ひどく強くなって雷雨になった。

私は傘を持ってない。

広間の一角の窓際に座れるようになってるところがあったので、

そこで雨の具合を覗きながらしばし待つ。

「天空の城ラピュタ」の中盤あたり、シータがムスカに捕まって

要塞の一室に閉じ込められるシーンを思い出した。

解放されたパズーをシータがそっと見送る、

あの窓際の雰囲気とちょこっと似てる。



雨が弱くなった頃を見計らって外に出ると、歩いている間に雨はやんだ。

ホットサンドイッチを買い、お土産物屋さんをひやかしながら

頃合を見てバス停まで戻ったものの、時間を過ぎてもバスは来ない。

道が混んでバスが遅れているのだろう。


レンヌからパリまでのTGVは指定席で出る時間も決まってるのになーと

気をもんでるうちに再び雨。かなり本格的に振り出した。

スコール。雷。まさにバケツをひっくり返したような雨。

けどこの辺には屋根のあるところがなく、とりあえず柱の影に避難した。

‥‥いや単なる柱だから屋根はないんだけど。意味ないといえばないんだけど。

でもバス待ち人はみんな、とりあえず柱の影や壁際に集まって固まっていた。

吹きっさらしにいるよりはマシな気がする。まぁ気のせいだろーけど。


そしてバスは、雨が落ち着いた頃にだいぶ遅れてよーやく来た。


服が濡れたことやバスが遅いことなんかを言い合う人の声で

(日本語バリバリ聞こえた)バスの車内はしばらくざわざわしていたが、

そのうち波が引くように静かになった。寝息が聞こえるようになる。

こういう時まっさきに寝るはずなのに私は何故かまったく眠くなくて、

雨がやんだ外の風景をぼんやり眺めていた。北海道みたいな田園風景。

ふと気が付くと虹がくっきりかかっていた。

思わず教えたい気分になって周りを見回したものの、周囲の人はみんな爆睡。

通路挟んで向こう側の窓際に座る日本人のお父さんは起きていて、

寝ている家族を起こすことなく、デジカメで虹の写真を撮っていた。



バスが遅れた影響で、

レンヌに着いた時には乗る予定のTGV発車時刻10分前だった。

バス降りて走って駅行って

何番線から出るのか、掲示板と切符見比べながら慌てて行って、セーフ。


よく考えたら切符の買い方も何処の窓口で買うのかも

なんて言えばいいのかも知らなかった。乗り遅れていたらと思うとおそろしい。


そしてTGVに乗り込んでからようやく、

モン・サン・ミッシェルで買ったホットサンドイッチに口をつけた。

湯気がたつほどあったかかったものをビニール袋に入れっぱなしだったので、

しけってふやふやになってたがそれなりにおいしい。


ずぶ濡れの長袖の上着はまだ乾かない。Tシャツの背中も濡れてつめたい。

でもバスで寝なかった分、TGVでは爆睡した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ