かわる日常
夏休みが終わった。八月二十五日の朝……
『特別朝礼』が開かれ、夏休みボケで、眠そうに登校する生徒たちの目を覚ます事件が起きた
律のカミングアウトだ!
が……皆、ずっと以前から心のどこかで(こいつ実は女じゃねえの?)と思っていたらしく
『へえ~』というどよめきが起きる程度で……あっさり受け入れられた。
学校や町内で意外とあっさり受け入れられる
「人がらと性別は関係しないもの……良い人は、良い」
(よかった。これにて一件落着)と胸をなでおろす
なんて人生そんなに甘くない
教室。休み時間
「なあなあ」
背後から僕の首に腕を回し『軽くッドロック』をかけなだら、背中に胸を押し当てる律……いつもと変わらないじゃれつき方だ。
しかし背中に襲当てられるのは胸板ではなく、小さくも心地いい二つのクッション
そして、押しつらられる強さに比例して突き刺さる様々な負の感情がこもった視線。
律の服装や胸のさらしも取れ(押さえられいたせいか、サイズは平均よし少し下)
「なあ、今週も二人だけで良い事(公園の掃除、社会的に良い事)しようぜ」
「良い事って、誤解されるだろ」
「お前も気持ちいいって言ってたろ(きれいになって)」
案の定、誤解した周囲から何発もの舌打ちが聞こえる。
気持ちいいのか息苦しいのか……『うう』とうなるだけで反発しない僕の反応を面白がった律が何度も胸ををしつけるたびに舌打ちが……かこの状況が心地よくなって来た時
ひきつった笑顔の女子達が律の肩をつかみ助け舟を出してくれた
「ちょっと島守、さん……教室の隅で私達とお話ししようか」
『女子としての立ち振る舞いなどを教わっている』
集団説教の中心で、今にも『ややこしいな』と声が聞こえそうな表情でうなづく律。
(いい気味だ)などと鼻で笑う僕の前に男子たちが壁をつくった
「お前ら恋人どうしなんだろ? 律とはどこまでいってるんだ」
「お前は優柔不断(根性無し)だから、したくても出来ないだろう、けど、律はあの性格だから(さっきだって胸つけてた)、興味本位でキスしたり」
「いやそれ以上」
妄想で息が荒くなる男子達に『どう返事すれば』と困っていると……女子の説教タイムが終わった律が、向こうから男の壁を押しのけるなり、またデッドロックをかけ
「で、さっきのつづきだけどさ」
反省する気ゼロの笑顔(相変わらずのマイペース)
「「ちょっと、島守さん!」」
女子たちが『こっちこそ説教のつづきをしたいか』声を上げる
「はいはい」
大人しく両手を上げて一歩下がりため息、小声で「まったく女子ってやつは」
「お、ちょうどよかった律、島守さん。こいつとはどこまでいったんだ」
「公園とか海に、たがいの家……てそんなん聞いてどうすんだ?」
「そうじゃなくて、もと男なら分かるだろ?」
「ああ、それだったら『俺は女だ』てカミングアウトするきっかけになった……って、言っていいかな?」
自分には被害がこないから『ニヤリ』と笑い、許可を求める律に僕は
「いやいやいや、お願いだからこんな場所で言わないで」
このやりとりを見て、思春期が黙っていられるわけもなく
「ここまで言っておいて秘密なんて、ひどい!」
『言っていいか』と視線を向ける律に、僕は必死で首を振るが
「俺達クラスメイト、仲間だろ……ここだけの話、秘密にするから」
『仲間』と言う言葉に弱い律は、あっさり口をわった。
「俺んちの風呂で、裸見られた」
「下着姿?」
律の言葉が受け止められず、思わず現実逃避してしまった男子
「風呂なんだからだから全裸に決まってるだろ」
「ヘンタイ」「最低」
静まりかえる教室……隅から聞こえる女子たちの罵声が胸に刺さる。
「その責任をとるため将来、始は俺と結婚して、島守組をつぐ」
『島守組をつぐ』その言葉を聞くなり、教室中が納得したようにうなずき黙った。
そして週末、いつものように僕と律は数人の島守組組員と一緒に公園を掃除している……が、作業に集中できない。
(近い)
教室と同じく、僕をからかうように近づく律。
今まではぶつかるほど近くにいたって平気だったのに、女と分かるなり、ワンピース姿の律をちらちら見る僕。
『何か間違いを犯さないか』『むしろやっちまえ』ときがきじゃないない組員。
読んでいただき、ありがとうございます。
『メガネ君先輩のたんじょう』
第九部『かわる日常』
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by.メガネ君(作者)