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男同士の恋? は急展開

 公園で休憩している僕達をおそう、大雨。

おかげで、アツアツの串焼きも冷めて、タレも流れてしまい……普通ならきょうざめしてゴミ箱いきだろう……が『ザ・庶民』の僕はそんな事気にせず食べる。


「お、俺のも一本やるよ」と苦笑いする律

「ありがとう」


「さっきの子……降ってくる前に食べきれたのかな?」

などと話していると……律がくしゃみをする


「みょうに冷えるな……雨、やみそうにないから、ひどくならないうちに、家でシャワー浴びたい」

「いいね……それじゃ……ダッシュ!」

 というなり僕は、雨宿りしてた木陰から飛び出し……その後を律が追いかけ。あっという間に追い越した。


 そして律の家……門をくぐると、うそのように雨はやみ太陽が顔をのぞかせる。

(なんというご都合主義。この門は世界の境目か)



「ずぶ濡れのままで悪いけど風呂は俺が出るまで、部屋で漫画でも読んで待ってくれ」

「うんいいけど、学校のトイレ(車イス用トイレ『律専用トイレ』)といい、相変わらず(潔癖症?)だな……かりにも僕と恋人同士以前に男同士なんだから、幼稚園の時みたいに一緒に入ろうよ」

「いやだ、あの時はまだ小さかったから……とにかく分かってくれ」


 言いづらそう、いや内心面倒くさそうに顔を曇らせる律に『いいよ』と苦笑いしながら従い、律の自室へ。


 一冊読み終えて、湿った服に体が冷えて……我慢できず風呂場に向かう

広い脱衣所のかごには、律の服と包帯が

(ケガしてるのかな? 少し心配だ)

「律」

と浴室のドアに手を掛けようとした瞬間


「きゃ……あ始か、入らないって約束しただろ」

「うん……て、相変わらず律って驚いた時可愛い声出すな」

「うるさい。それより」

「分かってるよ……ドライヤーで頭かわかしたら、戻るよ」


 二分後、ドライヤーのスイッチを切り……せっかく洗面所にいるんだからと、メガネを洗う

(メガネについた水滴って、ついた時はもちろん、乾いても、白くなって視界のさまたげになってしまうんだよな)

「よし」

(最後にくもり止めスプレー)

と一連の作業を終え、メガネをかける。と同時に正面の鏡がくもる。

(さすがはくもり止め。視界ばつぐん)


得意気にわ鼻で笑いながら振り向いた僕は言葉を失った

「「え⁈」」



僕の眼前には……『顔は人間、胴体は犬』ならぬ『顔はおとこ、首から下は女子』がたっていた。


「お前。こっち見んな!」

「ごめんなさい」

律の怒鳴り声に、条件反射で謝り、視線をそらし回れ右をする……が、くもりが取れた鏡にも同じ人物が……当然、相手(律)も気付いたのだろう。みるみる表情がけわしくなっていく。


(鏡が嘘つくわけない、けど、何だあれ……とにかく出よう)

 混乱した頭のままだけど、その場を後にしようとドアの前に立つ。

までは良かったが……ノブをつかみ、何を血迷ったのか『確認のため』をめいもくに回れ右、相手(律)の姿をじっと見る。


(うん良いおっぱい、確かに女の子だ……だったら律はどこに消えたんだ……第一彼女は誰?)

 再び裸の相手(律? 女の子)を前に考えこんでいると……

「こっち見んなって、聞こえなかったかな? 仕方ない」

 さっきから胸を隠すなど恥ずかしがる素振りなど一切なしない彼女は、呆れ顔でため息をつくと……拳をならしながら僕の正面に歩み寄る。


「え?」

「ごめんね」と、みぞおちに一発、強烈なパンチを放ち、僕を気絶させた……のか


(あれ目の前が暗く……意識が、うすれ……)


 ……目が覚めると、いつの間にか僕は自宅のベッドで横になっていた。

窓を見ると、もう夕方だ。

(あれ今日は何があった)

 思い出せず頭を掻いていると一階したの台所から夕食カレーの匂いがたちのぼってきた。


 リビングに入ると、両親がだまったまま、カレー鍋をはさんで座っている。

(考え事かな? 気まずい雰囲気……よし)

巻き込まれたくない僕は、おかまいなしに明るい声で

「お母さん、夕飯出来てるなら早く言ってよ……食べて良いんだよね?」


「え⁈ ええ、母さんたちの分もよそってくれない」

「うん」うなづき、よそいながら「今日学校帰りに、律の家に行ったんだけど」


「うん」

「僕っていつ帰ってきたか知ってる?」


「え? 母さん玄関の花壇を手入れしてたから分かんないな~」

「おお、父さんこそ会社から帰って階段わきのトイレに入ってたから、お前の足音なんて聞いてないぞ」(正解、島守組の男にお姫様抱っこで運ばれてたので、始めの足音はしない)


(玄関先に、階段わき……どっちも帰宅して僕の部屋につくまでにとおる場所なのに分からないなんて)

 なにに驚いたのか、歯切れ悪くも口々に答える両親を見てくびをひねっていると。


「いい。ただ心の準備はしておきなさい」

と言葉を残し、父さんはソファーへテレビを視に。母さんは流し台へ皿洗いに。

テーブルを後にした。





 数日後……土曜日、早朝。

まだ夏休みで、お父さんの勤める会社も連休に入り……のんびり家族そろって遅い朝食をとっていると、ふいに電話が鳴り母さんが出た。

「もしもし原で……」

「はい」「はい」

返事をするたび表情を変える母さんをみて、深くため息をつく父さん


(どう見たって、普通の電話(ただ事)じゃない)

そして電話を切るなり

「始。今から一緒に出掛けるから、身なりを整えたら、この服に着かえて座ってなさい」

「うん」


「あなた、金庫から実印とボールペン持ってきて」

「ああ」

(金庫にボールペンって、どんな高級品だよ)

なんてツッコミを入れられない慌ただしく動く両親に、だまってしたがう僕。


 数分後……再びテーブルで向かい合うと、二人は正装していた。

「そんな服着て、どこ行くの?」

「島守さんの家よ」

「律の家? そんなの普段着で」

「始。前に『心の準備はしておけ』と言ったのを覚えているか」

「うん」

「その時が来たんだ」

「その時って、心の準備って、説明して」

「そんなもの、行けばわかるさ」

さっきから少年漫画に出てきそうなセリフをかえす父さんと、うなずく母さん


(そういえば最近、律とは会えないし、電話もよそよそしい)

「何か悪いことした?」と聞いても『べつに』なんともそっけない返事


 考えていると……玄関前に黒塗り家紋つきの外車が止まり、運転席から降りてきたガタイのいい男が、呼び鈴を鳴らし入ってきた。



「すみません、島守組のものです。お迎えに参りました」


 その低い声を聞くなり小心者のお父さんは、いちもくさんに玄関へ向かい、僕と母さんもその後を追って……家を出て車の前へ。

(この場合、父さんが助手席だろう)


「始さんは助手席におねがいします」

後部座席がわに立つ僕へ、ドアを開け手の平で指す男


 そして島守組へ向かう緊張した車内……もの言わぬ両親を背に、助手席の僕は。

(なんだろう呼び出されるなんて……おぼえてないだけで僕、律に悪いことしたかな? とにかく会ったら謝ろう)


 門前。僕達を降ろした車は『すぐ門が開きますので』と言い残し去っていった。

(これが人間『生きた心地がしない』といった顔か)

 などと、かるく青ざめた両親の顔を見ていると……門が開き、両サイドに並ぶ男達と、暴力団どくとくのお出迎え。

「「いらっしゃいやせ、お客人!」」


当然いしゅくして頭が真っ白になっていると、案内役の男が出てきて

「ここでお待ちください」と大広間にとおされる。



 しばらくすると『島守組組長』いな、律の両親と……なんとなく律に似た顔をしている和服姿の女の子が入ってきた。


(なんだろう、どこか律に似ているけど、可愛いな)

 見とれてる視線に気付いたのか、彼女は笑みを浮かべ小さく手を振り……僕も振り返す。


 僕達は、相対する様に横並びで向かい合って座った。

慣れない正座にモジモジしていると、律の父さんが笑う

「ははは。始くんも、原さんもそんなに緊張しないで、あぐらをかいてくれてもいいですよ、ほら」


 あぐらをかきニヤリと笑う彼に『それではお言葉に甘えて』と僕も父さんもあぐらをかき、一息ついて正面を見て驚いた。

なんと和服の彼女もあぐらをかき、後ろに両手をついて天井を見上げている。


「こら、はしたない」

律の母さんにカツを入れられるなり、彼女は正座に戻った。


 咳ばらい一つで……空気が変わった。


「今日は律の、ひいては始くんとその家族の今後について、大事な話がしたく来ていただきました」

律の父さんの言葉に手を上げる。

「おじさん、その、律はどこに居るんですか?」

「「「「え」」」」

僕の言葉に一同あぜん、

少女にいたっては呆れるあまり口を半開きに僕に向かって固まっているが、その目には殺意さえ感じられる。


「おいおい始くん、なにを言ってるんだ? 律なら前に居るじゃないか」

「でも、え?(女の子)」


「服装が違うだけで、友達の顔忘れるなんてひどいな……何年付き合ってんだ?」

「でも律君、何で男装せずに、正体が分かるような和服を着てるの?」


「「え?」」

「えって、もしかかして家族で気付いてるの私だけ? 律君、女の子よ」

 ごく自然な顔で質問する母さんに、父さんと一緒に驚きの表情を向け……そのまま律の家族を見ると……頷く島守一家。


「いや。気付かれてましたか……原さんの言うとおり、実は今まで、わしらはあなた達を、いや世間さんをだましていた……すみません」

 と、『これが冗談ではない証拠』とばかり深く頭を下げる島守一家に、うまく言葉をかえせない。


「どういうこと?」(ある程度予想は付くけど)

「律は女の子だだから今の和装こそが本来……つまり今まで男装していた」


言葉だけじゃ納得できない顔の父さんに、律の母さんが

「言葉や書類だけでは、納得していただけないとうですので、脱衣所まで一緒に来てください。律、行くわよ……始くんは待ってってね」

「はい」


そして広間で二人向かい合う僕に、律の父さんが

「夏休みが終わったら、律には本来あるべき女の人生を送ってもらおうと思っている」

「はい」

「そこで……律が女子と分かって『ある意味で君達だましていたとして』も、今までどおり仲良くしてくれるか」

「何を言ってるんですか、それ程度で彼を嫌いになるわけない」



そして戻って来た四人

「でもなぜ正体を明かした?」

「事故とはいえ、この前裸を見られたから」

「裸を見られたからって、なんとも古風というか、今まで隠してきた努力をゼロにするなんて」


「でも急に女子だなんて、学校でいじめられるんじゃ」

「先に女子に正体をばらしたら……女子に嫌われたくない男子は、黙って従うしかない」

(確かに男は女に、力で優っていても、そう言った精神面では負けて尻に敷かれる)

「だったら女子にはどうする」

「何年男子をしてたと思ってる?」

「それって」

「男子のあれこれを、ある程度教える」



(さすが何代もわたって町内を影でおさめてきた『島守家』だ……家族そろって駆け引き上手)

感心しうなづいてると、律の父さんが歩み寄るなり、前に座ってじっと僕の目を見て口を開く。


「始くん。あらためて確認するよ……律を女とおして認めて、今までどおり『責任をもって』付き合ってくれるかい?」

「はい……でも責任をもってとは」

「思春期の男女が、今までどおり恋人として付き合うんだ……古い考えかもしれんが『できちゃった婚』なんてのもあるだろう」


『あ』顔を引きつらせる僕と、声を上げる律。

「ちょっとおやじ!」


「男が『はい』と答えたんだ。いまさら『おじけづいたから無し』なんていわせないぞ……いやあよかったよかった」


 そういうことで、この瞬間……どうやら僕は律との結婚。ひいては『島守組』次期組長になることが決定したようだ。


「え?」


読んでいただき、ありがとうございます。

『メガネ君先輩のたんじょう』

第八部『男同士の恋? は急展開』

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とてもうれしく、励みとなります。よろしくお願いします。


by.メガネ君(作者)

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