第七十六話 古代遺跡を探索します9
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瘴気調整部屋での情報収集は三日間行われた。
古代遺跡の地図は全て書き写した。中には塞がって進めない通路とかもあるだろうけれど、今後の古代遺跡の探索はずいぶんと楽になるはずだ。探索する機会がどれだけあるかは知らないけれど。
他にも守護者の巡回ルートとかの情報なんかも得られた。まあ、調べていたのはエレノアさんだけど。僕はその横で地図を書き写していただけだけど。古代文明がマルチディスプレイ対応で助かったよ。
古代遺跡の装置をすっかり掌握し、様々な情報を引き出したり遺跡の設備を操作できるようになったエレノアさん。けれどもそれでもできないことはあった。
まず、古代遺跡内部を巡回する守護者の行動を止めることはできなかった。たぶん、主制御室と呼ばれていた場所でなければ操作できないのだろう。それらしき場所の見当はついているのだけれど、ちょっと遠いからそこは後回しにすることになった。
それから、瘴気の発生源についても相変わらず全く情報がなかった。よほど厳重に隠蔽されていた重要機密なのだろう。何しろ、ちゃんと制御していたはずの古代文明でさえ、ちょっと扱いを間違えただけで都市一つ滅んでいるからね。
都市一つ……では済まないのか。今のアルスター王国よりも広い範囲で戦乱の暗黒時代が続いたわけだし。もしかして、古代文明が滅んだ原因って、これ? うわぁ~、あり得るよ。
まあ、ともかく、行ってみないことには何も分からない。カメラが故障したのか、元々ついていなかったのか、その場所の画像も見れなかったしね。
「それでは、瘴気の元へ行こう。」
アレクの言葉で、僕たちは移動を開始した。
今回の探索は、ある意味今までで一番簡単だと言えるかもしれない。
何しろ、目的地の場所も判明しているし、地図もある。そこに至るまでの最短ルートも分かっているのだ。
古代遺跡に意図的な罠は無いし、障害になりそうな仕掛けはエレノアさんが可能な限り解除してしまった。
ダンジョンと違ってモンスターも現れない。代わりに守護者が出るのだけれど頻度は少ないし、白や黒の守護者の倒し方は既に分かっている。
もちろん古い遺跡なのだからあちらこちら壊れていたりして、罠とは別方向で危険もあるのだけれど、その程度ならば普通に注意していれば事足りる。
そんなわけで、僕たちは古代遺跡の中を足早に進んで行った。
けれども、そんな快進撃もここまでだった。
「……やはり、いるな。」
「めっちゃ、強そうやな。」
部屋の中を覗き見していたアレクとカレンさんがそう評する。
この部屋こそが今回最大の難所と予想された場所。
建国王ルーカスが一目見て逃げ出し、その後行われた探索でも「絶対に近付くな」と念を押したと云われている場所だった。
白や黒の守護者ではそこまで恐れられることはなかっただろう。まあ、何百体もいたら引くけど。
けれども、その部屋にいたのはたった一体の守護者だった。
それは、白い守護者でも黒い守護者でもなかった。
第九階層のモンスターを彷彿とさせる巨体。
全身を覆うのは金色の輝き。
太い四肢と蝙蝠のような羽。
細長く突き出た三本の首。
その姿は、まさに伝説上の怪物――
「……三つ首のドラゴン!」
これまでこの古代遺跡で遭遇した守護者は三種類。
攻撃よりも防御に重きを置き、警備兵のような行動を取る、白い守護者。
攻撃力と素早さに特化し、対人殺傷を目的としたモンスターのような、黒い守護者。
そして最後に、巨大な体躯を誇るドラゴン型の守護者。
最後のだけ、なんか系統違いませんか!?
白と黒の守護者は対人戦闘用だけど、ドラゴン型は一軍を相手にする戦略兵器ですよねぇ!?
逃げ出した建国王は正しい。
アレクだって、必要が無ければ戦おうとは考えなかっただろう。
巨体の守護者は、今いる広い部屋から出ることはたぶんできない。この部屋に入らなければ、戦う必要は無いのだ。
しかし、残念ながら、僕たちの目的地はこの部屋の先にあった。
重要なものを守るために配備されている守護者だ、避けて通れるほど甘くはない。
一当てして無理そうならば別の場所を先に探索する、とアレクは言っているけれど、主制御室と呼ばれていた場所へ行ってもこのドラゴンを止められるとは限らない。
そもそも、一当てとか言えるのは第九階層の巨大モンスターを撃破してきたアレクだからこそだろう。後々のことを考えても、アレクとしてはこの場でこの守護者を無効化しておきたいと考えていることは確かだった。
次回、ラストバトル開始です。
ラスボスとは違いますが。




