第七十三話 色々と報告しました
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王都に戻って来た翌日、僕たちは国に報告するために王宮に来ていた。
いつもならば、まずはアレクとアリシアさんだけで行き、必要に応じて他のメンバーが呼ばれるのだけれど、今回は最初からフルメンバーだった。普段なら対象外のジェシカさんまで最初から参加することになった。
それだけ今回の探索結果は重要だと、国も理解しているのだ。
最初は第十階層の探索結果の報告から始まった。
会議には僕たちだけでなく、冒険者ギルドのギルドマスターと職員も最初から加わっていた。
第十階層の情報ともなると、最初から国と冒険者ギルドで意識合わせをしておく必要があると考えたみたいだ。
実際に、迷宮核が複数あったこと、過去にダンジョンで戦った国軍や冒険者を模倣したモンスターが出て来ることなどの新事実は、衝撃を持って受け止められた。
これらの報告の中には、僕たちの推測の部分もあるので、どこまでが確実な事実で、勘違いや見落としなど無いかを精査し、その上で一般国民や冒険者に何をどのように公表するか。それれを見極めて国と冒険者ギルドで意識合わせをする。
そんな会議を一日かけて行った。
そして翌日。この日もまた朝から会議だった。
ただ、メンバーが一部入れ替わっていた。
アレクを筆頭とする僕たち勇者パーティーは昨日と同じくフルメンバーだった。
しかし、国の側のメンバーはほとんど入れ替わっていた。人数も減っている。
冒険者ギルドのメンバーに至ってはギルドマスター唯一人だった。なんかちょっと居心地悪そう。
そしてなぜか、国王陛下までいらっしゃるんですけど~~!!
今日、これから行われる会議は、ダンジョンの第十階層の先にあった古代遺跡の探索結果についてのものだ。
今いる国のメンバーはおそらく邪竜対策の研究をしている者達。昨日のダンジョン対策のメンバーと入れ替わったのだろう。
国王陛下が同席するのも、重要な報告だけに自分で直に聞くつもりなのだそうだ。
ここから先は国家機密。それも国の存亡にかかわる飛び切りの秘密だ。
そこに巻き込まれたギルドマスターはさぞや居心地が悪いだろう。気持ちはわかる。僕だってできることならば今すぐこの場から帰りたい。
元々冒険者ギルドに委託していたのはダンジョンの管理で、王都の地下に広がる古代遺跡はその対象外。三百年前からの取り決めでも冒険者ギルドには何の権利もなかった。
しかし、ダンジョンの最深部が古代遺跡と繋がっていたことが判明した今、冒険者ギルドに何も知らせないわけにはいかなかった。冒険者ギルドで不用意に調べ回られても困るのだ。
そんなわけで、ギルドマスターにのみ事実を教えて口止めすることになったのだ。
因みに、ダンジョンの第十階層から地下遺跡に通じる入口はエレノアさんが魔術で封印してきた。解除方法は会議に会議に提出する資料に記載されているけれど、何も知らない冒険者が通り抜ける心配はないだろう。それ以前に第十階層まで到達できる冒険者がまずいないのだし。
会議は粛々と進んだ。
会議と言っても今回は議論したり何かを決めるための場ではない。地下遺跡を探索して見聞きしたもの、調べて判明した事柄を報告し、その報告内容に疑問があれば説明する。そういう場であった。
地下遺跡はその存在すら秘されている国家機密であり、公表の是非を議論する余地はない。邪竜対策の議論もこの場ではなく、一度持ち帰って専門チームの間で行われることになる。
結局、国王陛下も、ギルドマスターも一言も口を挟まずに会議は終わった。
まあ、会議というより、エレノアさんの独演会に近い状態だったけどね。
国への報告が終わった後は、冒険者ギルドへの報告を行った。と言っても、国への報告時に冒険者ギルドの主要メンバーも同席している。ほぼ形式的な報告だった。
後はダンジョンで入手した摩核や作成した地図、そして二つ目の迷宮核を提出して報酬を受け取るだけだった。
ただし、古代遺跡の地図やそこで入手したあれこれに関しては冒険者ギルドの管轄外なので提出はしない。
まあ古代遺跡関連の買取はなくても、貴重な第十階層の地図に加えて二個目の迷宮核まであるのだ、報酬額は無茶苦茶高額になる。
今回は二度目の第十階層到達記念として盛大な宴会になった。次回の探索がいつどのような形になるか不明だということもあり、これまでにない数の冒険者が宴会に参加していた。
そんな中、僕は宴会には参加せずに怪しげな酒場に来ていた。
「お前の予想は当たっていたようだぞ、グレッグ。」
もちろん、ジャックに会うためだ。
「みたいだね。王都に潜り込んでいたモンスターを見つけたんだって?」
僕がジャックに依頼していたのは、王都で起こる凶悪事件を調査して、その背後で暗躍するモンスターの存在を確かめることだった。
「裏社会で把握していた表沙汰になっていない事件も含めて精査したところ、地下の下水道沿いに事件が多発していることが分かった。後は国の方で調べてくれたよ。」
犯罪者の元締めである裏社会が凶悪犯罪撲滅に動いていたのだから皮肉なものだ。それとは別に、レオンハート殿下も不審な動きを見せる貴族の関連性を調べていたらしい。
結果として、ネズミのような小型のモンスターが下水道を通って出没し、瘴気を振り撒いて人々を狂わせていたことが分かった。少量の瘴気は人を好戦的にしたり、不安を増大したりする作用がある。
「それでモンスターが見つかって、国が冒険者ギルドに依頼して退治したんだってね。」
この辺りの経緯を、僕は国への報告会の中で聞いた。小さいとはいえ相手はモンスターなので、その退治を冒険者に依頼したのだそうだ。
つまり、この件は国と裏社会と冒険者ギルドが協力して解決したことになる。国と裏社会の間を取り持ったジャックのお手柄だろう。
「下水道のモンスターが一掃されてからは、凶悪事件の増加も収まった。これでひとまず解決したとみていいだろう。」
小型のモンスターが完全に全滅したとは限らないし、今後もダンジョンからやって来る可能性もある。けれども、何か行動を起こす余力は無くなったようだし、国も定期的に調査して駆除する方針になったらしい。今回はこれで終わりとみてよさそうだった。
「それで、どうする? 今度こそ依頼終了でよさそうに思うが。」
「そうだね、ここで一旦終了にしよう。今までありがとう。何かあったらまた頼むよ。」
これで当面の心配事は無くなった。王都の方はジャックに頼らなくても問題ないだろう。
残る心配事は、地下の古代遺跡の中にあるのだけれど、その辺は国の偉い人に考えてもらうしかないよね。




