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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第七十二話 古代遺跡を探索します6

ブックマーク登録ありがとうございました。

 「これは間違いなく古代文明時代の記録!」

 エレノアさんが興奮していた。表情はあんまり変わらないのだけれど、目の輝きが尋常ではなかった。

 古代文明は謎に包まれている。遺跡からの発掘品などから非常に高度な技術を持っていたことは確かだけど、どんな人がどのように暮らしていたのかなどはまるで分っていない。

 これほど直接的に古代文明時代の人の肉声が見つかったことは、これまでなかっただろう。エレノアさんは考古学や古代文明の専門家ではないけれども、この大発見には興奮を抑えられないようだ。

 「邪竜は古代文明の産物だったのか……しかし、……」

 喜ぶエレノアさんとは逆に、アレクは悩んでいた。

 「結局、邪竜はおらんかったちゅうことか?」

 「少なくとも、昔話で語られる大地を暴れ回った怪物はいないのだろう。実際に人々を脅かしていたのは瘴気だ。」

 古代遺跡の中で見た記録が正しければ、地上で暴れ、人々を殺して回った怪物としての邪竜は存在しないことになる。

 まず、古代文明時代に発生した事故だか事件だかにより大量の瘴気が放出された。記録では魔素と呼ばれていたものが瘴気で間違いないだろう。

 その後、この地は大量の瘴気により人の住めない、近付く者を狂わせる死の大地と化す。

 古代文明の都市は滅び、暗黒時代が始まる。

 長く続いた暗黒時代は、瘴気の影響を受け付けない特異体質の勇者ローランドが、瘴気の流出を止めるまで続く。

 そして最終的には建国王ルーカスが瘴気を完全に止めてアルスター王国を建国して現在に至る。

 暗黒時代に猛威を振るっていたのは強い瘴気であり、邪竜はその理不尽な脅威から生まれた空想上の存在である。

 「しかし、この遺跡には膨大な瘴気を生み出す何かが存在する。」

 瘴気というものは人が普通に生活していても発生するものらしい。けれどもその量は微小で、自然に分解される量の方が勝り、多量に蓄積することはまずない。

 一つの都市をまるごと死の大地と変え、広範囲に致死量の瘴気を撒き散らす。それほど大量の瘴気を発生するものとは一体何なのか? 想像もつかない。

 先ほどの記録では、魔素生成機(ジェネレーター)とか言っていたけれど、古代文明の人にも良く分かっていないもののようだった。

 「瘴気の蓄積量は現在八割程度。三百年くらい前に一度満タン近くになってから、半分にまで減っている。おそらくエグバートがダンジョンを作る時に消費した分。」

 いつの間にか部屋の中にある装置を操作していたエレノアさんが現状を報告する。この部屋は、たぶんさっきの映像にあった副制御室(サブコントロール)なのだろう。

 邪竜のことはともかくとして、ダンジョンを作ることで瘴気が溢れ出すのを防ぐことには成功していたわけか。しかし……

 「このままで行けば、二百年後には瘴気が溢れ出すことになるのか。」

 三百年前のエグバートの予想は正しかったようだ。放置しておけばロシュヴィルに人が住めなくなることも、ダンジョンを作っても一時しのぎでしかないことも。

 「ダンジョンのモンスターを倒したり、迷宮核(ダンジョンコア)を取り外したりすれば瘴気の消費が大きくなるから猶予は増える。でもやはり瘴気の発生量の方が大きい。」

 エレノアさんも冷静に現状を分析する。冒険者達が頑張ってモンスターを倒しているのは、どの程度の効果があるのだろう。

 それにしても、古代文明ではこれほど大量の瘴気を何に使っていたのだろうか?

 「やはり、瘴気を生み出す存在をどうにかするしかなさそうだな。」

 アレクが改めて今後の方針を確認する。つまり、邪竜退治だ。

 邪竜は、お伽噺に語られるような怪物である可能性は低くなった。それが何であれ、古代文明は管理して利用していたものだ。

 けれども対処が容易になったとは限らない。

 例えば、暴走寸前の原子力発電所を前にして、科学技術を知らないファンタジー世界の住人が、いや科学技術を知っていても専門家でもない素人が、安全に対処できるだろうか。

 極論すれば、八つの頭を持つ巨大なドラゴンを拘束して瘴気を吸い取る装置が待ち構えていたとしても不思議はないのだ。

 まあ、無理なら無理で、できる限りの情報を持ち帰って、邪竜対策の研究を続けるだけだろうけどね。

 そしてモンスターを倒して少しでも時間を稼ぐ。もう一回ダンジョンを作ることは、もうできないだろうから。


 「はい、みんなこれを持って。」

 エレノアさんがみんなに配って回ったのは、手のひらサイズの白いカードのようなもの。

 「これは?」

 「この古代遺跡の鍵。持っていれば、だいたいの扉は開く、はず。」

 セキュリティカードでした。この部屋は施設の管理を行うところみたいだから、そういったものがあってもおかしくはなかった。

 「なるほど、それではこの鍵を持って探索を続けるとしよう。」

 鍵を手にしたことで、その後の探索はスムーズに進んだ。

 ただ、その後はあまり大きな成果は上がらなかった。

 鍵によって簡単に入れるようになった幾つかの部屋に入って調べたけれど、邪竜――瘴気の発生源に関する情報は特になし。

 古代文明に関する資料やアイテムはいくつか見つかって、エレノアさんが嬉々として回収していたけれど、それ以外は特に進展がなかった。

 やはり先ほど入った部屋が重要度の高い場所で、その周囲はあまり重要な資料などは置かれていなかったのだろう。

 そして、幾つもの通路が塞がっていた。

 古代文明の遺跡は異様に頑丈なのだけれど、それでも非常に古いものだ。土砂でも入り込んだのか塞がってしまった通路や、押しても引いても開かない扉なども存在していた。

 「仕方がない。ここまでで集めた情報を持って一度引き返そう。」

 これ以上進んでも進展はないと判断したアレクが、撤退を決定した。

 第十階層の探索結果に加えて、地下遺跡でいくつもの新しい、というか衝撃の新事実を発見したのだ。無理せず情報を持ち帰ることも重要だった。

 僕たちは来た道を引き返し、ついでに途中で鍵によって新たに入れるようになった部屋がないかを調べ回った。まあ、エレノアさんの好奇心を満たす以上の発見はなかったけれど。

 そしてダンジョンの第十階層まで戻り、後は『ポーター』で階層を登って行くだけだった。

 こうして僕たちは、無事に地上へ戻って来た。


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