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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第五十一話 謎のアンデッドと戦います

 しばらく大部屋の外から様子を窺っていたのだけれども特にアンデッドたちに動きは無かった。なので、少し作戦を打ち合わせてから突入することにした。

 「『浄化(ピュリファイ)』!」

 最初の一手は、アリシアさんの浄化の魔術。範囲を大部屋全体に広げたから倒しきることはできないにしても、アリシアさんの魔術なら弱いゾンビやスケルトンには大きな効果が期待できる。

 そして、弱体化したゾンビやスケルトンを蹴散らしながら、中央の謎のアンデッドに迫る!

 ……あれ? たくさんいたゾンビやスケルトンが半分以下に減っている。残りも倒れ伏して虫の息だ。一撃で雑魚を全て無力化しちゃったよ。ひょっとして、アリシアさんだけでこの階層を制覇できちゃったりする!?

 雑魚アンデッドに邪魔されることなく進んで行くと、その先に問題のアンデッドがいた。さすがに雑魚アンデッドとは違い、アリシアさんの浄化を受けても平然と立っていたからすぐに分かった。

 ……平然と、していたんだよね? 顔色悪いのはアンデッドだからだよね?

 近付いてみると、そこに立っていたのは七名。パッと見顔色が悪いだけの冒険者のようだけど、生命探知(ライフディテクション)で生きた人間がいないことは確認済み。

 「あの男、リッチです!」

 アリシアさんが、一体のアンデッドを指して警告する。

 アンデッドの頂点である不死之王(ノーライフキング)には及ばないまでも、リッチもまた高位のアンデッドであり、この世界でも伝説やおとぎ話の存在だった。

 小説の設定ではリッチも死霊術(ネクロマンシー)を使うことができ、主人公(グレッグ)の配下にリッチが誕生したことで急速に戦力を増やしていった。

 この世界でも同じならば、残りのアンデッドはそのリッチが死霊術(ネクロマンシー)で生み出したものだろう。そして――

 「そんな、ホークさん!」

 リッチとなった男を見て、ジェシカさんが驚愕した。

 「それに、ゲイルさん、トリスさん、レベッカさんまで……」

 ホークというのは、確かジェシカさんが以前いた冒険者パーティー『暁の戦塵』のリーダーで、奴隷としてのジェシカさんの前の主人だった男だ。

 つまり、ダンジョンで非業の死を遂げたホークが何故かリッチとなって甦り、同じく死んだ仲間や他のダンジョンで亡くなった冒険者をアンデッドにして支配下に置いたということか。

 色々なことが一気に分かってしまったよ。どうしていきなりリッチになったのかは不明だけど。やっぱり運命(シナリオ)の強制力なのかな?


 「ジェシカーかー、ちょうどーいいー、そいつらをー殺せー!」

 ジェシカさんを見つけたホークが、ちょっと怪しい発音でそう言った。

 ……こいつ、まだジェシカさんの主のつもりでいるよ!

 「アンデッドが、喋った!?」

 言葉を発するホークを見て驚くアレク。そうか、アレクは喋るアンデッドを見るのは初めてだったか。まあこれがこの世界の人の普通の反応だ。

 「理性を持ったままアンデッドに……面白い。」

 興味津々といった様子のエレノアさんの反応は普通じゃないです。お願いだから、死霊術(ネクロマンシー)の研究を始めるとか言い出さないで~。

 「私はもう貴方の奴隷ではありません! 皆さん、ホークさんの相手は私に任せてもらえませんか?」

 普段は控えめなジェシカさんが、珍しく強く主張する。これは因縁の対決だ、ジェシカさんにも譲れないものがあるのだろう。

 「……分かった。残りは俺たちが引き受けるから、好きなようにやって見ろ。」

 「はい!」

 アレクは残る六体のアンデッドを牽制しつつ、ジェシカさんから引き離すように誘導する。

 カレンさんもそうなのだけど、アレクはこの手の戦場のコントロールが巧い。

 ジェシカさんの方に変な横槍が入らないように敵をきっちり分断して、なおかつ何かあったらジェシカさんをフォローできるようにと、絶妙な位置取りだ。

 そして戦いが始まった。


 正直、戦闘に関しては何の心配もしていなかった。

 ダンジョンでモンスター相手の戦闘を続けていれば、見ただけでだいたい相手の力量を推し量れるようになる。たとえそれが初見の相手でもだ。アレク達はそういう戦いを続けてきたのだ。

 アレクが引き受けた六体のアンデッドは、せいぜいが第五階層のモンスター程度の強さ。第三階層で活動している冒険者にはきついけれど、アレクならば一撃で倒せる相手だ。

 実際に、アレクもカレンさんも一体ずつ一撃で倒してしまった。残り四体。

 その間に僕はアンデッド達の背後に回る。高位のアンデッドのためか、潜伏(ハイディング)が上手いこと効いた。僕は気付かれることなくアンデッドの背後を取る。

 あ、こいつ魔術を使おうとしている。

 高位のアンデッドの中には魔術を使うものもいる。見た感じ魔法職らしき格好をしているから、アンデッドになった後も剣よりも魔術の方が得意なのだろう。

 とりあえず背後から心臓を一突きして即座にその場を離れる。

 「!」

 魔術の発動は止められなかったけれど、放たれた攻撃魔術は明後日の方向へ飛んで行った。一応魔術の妨害はできたし、すぐに離れた僕も見つかっていないから上出来かな。

 「アンデッドが魔術を使うのか!」

 アレクが驚く。第三階層のアンデッドは魔術なんか使わないからね。しかし、驚きながらもアレクもカレンさんも冷静にアンデッドを倒して行く。これで残り二体。

 僕もまだ見つかっていないので、潜伏状態で魔術師アンデッドに走り寄る。そして速度を落とさないまま、すれ違いざまに短剣で首の辺りを一閃。

 頭を失い崩れ落ちるアンデッド。うわっ、自分でもここまでうまく行くとは思わなかったよ。

 残る一体をアレクが斬り伏せてこちらは終了した。六体のアンデッドは自我が薄いのか、最後まで一言も話さなかった。

 このアンデッドはモンスターではなかったのか、倒した後も消えなかった。まだちょっとぴくぴくしているから倒しきっていないのかもしれないけれど、起き上がってくる様子はない。

 後で焼くか、アリシアさんに浄化してもらえばいいだろう。

 後はジェシカさんだけだ。


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