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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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50/84

第五十話 謎のアンデッドを見つけました

評価及びブックマーク登録ありがとうございました。

累計三万PV超えました。ありがとうございました。


2021/7/31 誤字修正。

誤字報告ありがとうございました。

 小説において、主人公(グレッグ)が勇者アレクを倒す方法は単純だ。配下にした多数のアンデッドでアレク一人をタコ殴りにするだけだ。

 剣聖カレン、賢者エレノア、聖女アリシア、この三人の仲間を先に倒したのは、勇者アレクを孤立させるための下準備だった。

 全ての準備が整うと、主人公(グレッグ)は第三階層に配下のアンデッドを放つ。アンデッドだらけの第三階層にアンデッドがいても目立たないが、不死之王(ノーライフキング)の力によって作られたアンデッドはそこいらの冒険者ではかなわないほど強い。

 結果、第三階層に異様なアンデッドが現れたとして勇者アレクに指名依頼が出される。小説でも、人格はともかくとして、アレクは勇者に相応しい強さを持っていたからこういう時には頼りにされる。

 次々と仲間を失い世間の評判も急降下だったアレクは、再び自分の強さを見せつけようとこの依頼に飛びついた。アレクは冒険者ギルドで雇った冒険者を連れて意気揚々とダンジョンに潜った。

 ところが、ここで雇った冒険者は実は主人公(グレッグ)により送り込まれた配下だった。高位のアンデッドは一見して人と区別がつかない。

 既に悪い噂が流れまくり、普通の冒険者は金を積まれてもアレクの仲間になろうとは思わなくなっていたのだ。そのことに気付かなかったアレクは、仲間と思った者に道中聖剣を隠され、問題のアンデッドと対峙した際に背後から襲われることになる。

 そして最後は登場した主人公(グレッグ)が「仲間に裏切られる気分はどうだ?」などと言いつつアレクに止めを刺す。


 第三階層に現れた謎のアンデッドの対処。これは間違いなく小説のアレクへの復讐イベントに相当するものだろう。第五階層を探索できる冒険者が恐れをなす相手となれば、高位のアンデッドであることは間違いない。

 ボルドさん、強い相手ならば迷わず逃げるけど、格下のモンスターにはやたらと勇ましいからね。

 しかし、小説のイベントだとしても、今のアレクには負ける要素がまるでない。カレンさん、エレノアさんアリシアさんと魔王を討伐したメンバーは全員揃っているし、僕とジェシカさんもいるから裏切り者が入り込む余地もない。

 高位のアンデッドが束になって現れたとしても、アリシアさんの浄化魔法とエレノアさんの範囲魔法で殲滅される未来しか思い浮かばないよ。

 それでも油断はできない。よく分からない何かが起きていることは確かなのだ。

 正直僕は、このイベントだけは発生しないと思っていた。

 カレンさんの場合は欲に目が眩んだ野盗が、エレノアさんの場合は嫉妬心と功名心に駆られた調薬師が、アリシアさんの場合は暴走したストーカーがそれぞれ動いた。

 多少の裏や不自然さはあっても不死之王(ノーライフキング)が暗躍しなくても発生し得る事件だった。

 しかし、アレクのイベントだけはアンデッドが主体となって動くものだ。強制力がちょっとくらい周囲の人間の背中を押したところで、不死之王(ノーライフキング)となった復讐者がいなければ発生し得ない。

 そう思っていた。


 これはもはや、小説のイベントと考えるべきではないだろう。

 これは、ダンジョンの異変なのだ。


 僕たちは準備を整えてダンジョンにやって来た。元々第八階層を目指して準備を進めていたのだ。出発の準備はすぐに終わった。

 謎のアンデッドは、最初に目撃情報があって以来、ずっと同じ場所に留まっているらしい。他の場所での目撃情報や不自然な行方不明者は今のところ無いそうだ。

 冒険者ギルドでは、第三階層のその場所には当面近寄らないように冒険者に勧告を出していた。

 第三階層でもよく冒険者が立ち入る範囲はしっかりと地図(マップ)ができているから、一箇所くらい立入禁止になっても迂回路に不自由はしない。

 冒険者がアンデッドにされてしまう危険を考えれば、本当は第三階層への立ち入りそのものを禁止したほうが安全なのだろうけれど、冒険者ギルドであってもそこまで冒険者に強制することはできない。ダンジョン内での冒険者の行動は、あくまで冒険者の自己責任なのだ。

 この世界では死霊術(ネクロマンシー)はよく知られていないんだよね。魔物としてのアンデッドは自然発生したものばかりで、人為的に生み出せるものではないというのが一般的な認識だった。特に滅多に見かけることのない高位のアンデッドは研究も進んでおらず、何ができるのかも良く分かっていない。

 だから小説では主人公(グレッグ)が色々やってもバレることがなかった。人間のふりをしたアンデッドなんて、生命探知(ライフディテクション)一発でわかるんだけど、アンデッドが人間に紛れ込んでいるなんて誰も思わないからね。

 そんなわけで、今日も冒険者は平常運転。第三階層でも問題のアンデッドが居座っている場所以外では冒険者が探索を続けていた。

 そんな冒険者達を横目に、僕たちは最短コースで目的地へ向かった。

 「まさか、この場所だとはな。」

 そう呟くアレクは、革鎧に聖剣の本気装備だ。カレンさんも同様に革鎧で大剣を手にしている。

 そしてこの場所は、何の因果かジェシカさんと出会ったモンスター部屋の(トラップ)になっている大部屋だった。

 今は部屋の外からこっそりと中の様子を窺っている所だ。

 大部屋の中には数多くのゾンビやスケルトンがうろついていた。元々モンスター部屋ではあるけれど、ここは冒険者が入ってからモンスターが集まる仕掛けになっていた。最初からモンスターが溢れている時点で異常だ。

 そして見えているのは普通のゾンビやスケルトンだけだった。報告にあった奇妙なアンデッドはここから出は見えない。通常のゾンビやスケルトンの向こうにいるのだろう。

 最初の報告では「妙なアンデッドが数体いた」というだけだったから、通常のアンデッドは後から集まって来たものだろう。戦力として集めているのなら、時間が経つにつれ対処が難しくなる。

 「中央に一体、とてもに強い個体がいます。他にも何体か強い個体がいます。」

 生命探知(ライフディテクション)では感知できないアンデッドも、アリシアさんの聖女の魔術では探知できるらしい。

 小説のイベントに対応させると、とてもに強い個体というのが不死之王(ノーライフキング)主人公(グレッグ)で、何体かいる強い個体というのが主人公(グレッグ)の部下というところだろう。

 小説では自我を持った部下だけで十数名、自我を持たないアンデッドもそれ以上いるから、やはり小説のイベントに比べるとスケールダウンしている。

 しかし、ここにいるアンデッドの目的は一体何なのだろう?


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