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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第三十八話 第五階層でモンスターと戦います

評価及びブックマーク登録ありがとうございました。


2021年11月1日:誤字訂正

誤字報告ありがとうございました

 「左からモンスター、来ます!」

 第五階層のモンスターは総合的に見れば第四階層のモンスターと比べて極端に強くなっているわけではない。ただ少々厄介な特性を持っていた。

 一つは不意打ちを仕掛けて来ること。同じ不意打ちでも、砂漠のモンスターは近付かなければ襲ってこなかったけど、第五階層では向こうから近付いて来た上で不意打ちで襲ってくるのである。

 ジェシカさんが警告した左手には、一見ただ壁があるだけなのけど、

 ――ガラガラガラ

 突然壁が崩れ、モンスターが三体現れた。こいつらは、ダンジョンの壁に穴を掘って移動することができるのだ。

 現れたのは巨大なモグラのようなモンスター、ジャイアントモール。

 「こいつらは俺とカレンでやる。アリシアとエレノアは待機、グレッグとジェシカは周囲の警戒を頼む!」

 ここはアレクに任せて大丈夫だろう。それよりも、この階層では不意打ちで乱入して来るモンスターへの警戒を怠るわけにはいかない。

 「来ます! 真上から!」

 ジェシカさんが指さしたのは、アレクとカレンさんから少し距離を取った僕たちの真上。全員咄嗟にその場を離れる。

 直接戦っているアレクとカレンさんではなく、後衛を狙って来たか。一拍置いて天井に穴が開き、モンスターが飛び出して来た。

 現れたのは、ロックワーム。直径十センチくらいの太くて長いいミミズだ。砂漠に現れたサンドワーム(冒険者ギルドで正式名称が決まった)程の大きさはないけれど、侮れない攻撃力がある。

 ジャイアントモールとロックワーム。現在第五階層で確認されているこの二種類のモンスターは、硬い岩盤に穴をあけることができるのだ。盾や鎧程度ではその攻撃を完全に防ぎきることはできない。

 第四階層までのモンスターならば、大きな盾と頑丈な全身鎧で攻撃を受け止め、動きの止まったモンスターを攻撃するという戦法はかなり有効だった。しかしこの階層でその戦法を使うと盾や鎧に大穴を空けられてしまう。硬いものを破壊することに長けていること、それがこの階層のモンスターのもう一つの特性だった。

 「ここは僕が!」

 ジェシカさんには索敵に徹してもらった方が良い。僕は短剣を抜くと落下中のロックワームに素早く近寄り、斬りつけた。

 ロックワームの頭部には岩をも砕く頑丈な歯が付いている。これをまともに食らえば盾でも鎧でも剣でもひとたまりもない。しかし、それ以外はただのでかいミミズだ。

 僕は空中で首をひねってこちらに向かってくる頭部を避け、ロックワームを切断した。

 その頃には、当然のようにアレク達の戦闘も終わっていた。僕たちは手早く摩核を回収する。お、ドロップアイテムだ。「ジャイアントモールの爪」は固くて加工が難しいのだけれど、加工できれれば優秀な装備になるそうだ。

 正直、アレクのパーティーは第五階層のモンスターとは相性が良い。僕も含めて防具で受け止める戦い方はしないし、短剣でもちゃんと攻撃が届く相手だ。硬い外骨格に守られた第四階層のモンスターよりもよほどやりやすい。

 不意打ちで後衛が攻撃されることが最大の懸念だったのだけど、ジェシカさんが事前に察知できるのでその心配も薄れた。『生命探知(ライフディテクション)』の魔術では、単に壁の向こうの通路にいるのか、こちらに穴を掘り進めているのかの判別が難しいんだよね。

 「……やはり塞がってしまうのか。」

 アレクがジャイアントモールの出てきた壁を見て呟く。ダンジョンの壁は見た目以上に頑丈だ。床や天井もそうだけど、簡単には掘り進むことはできない。

 第五階層のモンスターはダンジョンの壁に穴をあけて進むことができるけれど、それは単に掘削能力が強力なだけではなく、ダンジョンの壁を掘り進む特殊能力があるか、もしくはダンジョンに許可されているから穴を掘れるのだろうと考えられている。

 そして、モンスターが掘り進んだ穴は、すぐに塞がってしまう。ダンジョンの壁は傷つけても元に戻る性質があるのだけど、穴が塞がる速度は通常のダンジョンの修復能力よりも明らかに速かった。

 いずれにしても、モンスターの開けた穴を利用してショートカットと言うのは無理そうだった。


 第五階層の探索はまあまあ順調に進んだ。

 今回は最初から未踏領域だったため、探索の手がかりや指針は全くない。なので、探索は原点に立ち返り、セオリー通りに進めた。

 特に難しい話ではない。まずは最初に出現した『ポーターの出口』を拠点として、行ける範囲を虱潰しに探索する。未探索の分岐が増えてきたら、作った地図(マップ)を見ながら次の探索範囲を考える。

 『ポーター』で移動するダンジョンの場合、迷路の必勝法である「右手の法則」「左手の法則」は通用しない。地道に全ての通路を調べて行くしかない。

 最初に出てきた『ポーターの出口』は真直ぐな通路の中ほどにあったので、この通路を南北に伸びているものと仮定して、まずは北に向かった。

 北側の通路は進んだ先で右に折れ、再び真直ぐな通路が三百メール程続いていた。この通路の左右には、短い行き止まりの坑道がいくつも付いていた。

 この短い坑道には、モンスターがいるわけでも宝箱があるわけでもないのだけれども、実は何もないただの行き止まりではなかった。掘ると鉱石の類が出て来る採掘ポイントなのだ。

 試しに何ヵ所か軽く掘ってみると、鉄や銅、少量だけど銀の鉱石、それに水晶が出てきた。エレノアさんが鑑定したから間違いない。

 第五階層の地図(マップ)が充実したら、鉱石や宝石を採掘しに来る冒険者も増えるだろう。普通の鉱山と違って、ダンジョンなら掘り尽くす心配がないからね。ただ、採掘中にモンスターに襲われる危険があるからやはり命がけになる。

 さて、採掘ポイントのある横道のたくさん付いた通路を進んで行くと、丁字路になっていた。左右どちらに曲がっても、その先に丁字路や十字路などの分岐がたくさんあり、かなり複雑な構造だった。そしてその先にも採掘ポイントがいくつもあった。

 複雑な通路を迷わないように、僕は丁寧にマッピングして行った。手持ちの紙に地図(マップ)を書いていくだけでなく、通路の分岐部分にもマークを書き込んでいく。この階層のモンスターは壁を破壊するので、戦闘に巻き込まれないように高い位置や低い位置に書き込む。ついでに先達の記入したマークもないかとチェックしているのだけど、今のところ見つからない。

 ある程度探索が進んだら、一旦拠点まで戻って昼休憩。迂闊なところで休憩すると壁を破ってモンスターが襲い掛かって来る。そういう意味では近付かなければ襲ってこない砂漠エリアはある意味気楽だったかもしれない。

 午後は通路の南側を探索する。すぐ近くにある『ポーター』を見落としていたりすると悔しいからね。拠点からなるべく均等に探索範囲を広げて行くのが理想だ。

 通路を南側に行った先にも同じように複雑な通路と採掘ポイントが広がっていた。出て来るモンスターは相変わらずジャイアントモールとロックワームだけだ。モンスターへの対応もだいぶ慣れ、僕も探知魔術でモンスターの奇襲を見分けられるようになった。

 拠点に戻って野営し、翌朝は作成した地図(マップ)を見て次の探索場所を選定する。

 これを五日間繰り返して、たくさんの通路、採掘ポイント、それに水場が地図(マップ)に記載されて行った。

 しかし、今だに『ポーター』は昇りも降りも見つかっていない。他の既知の地図(マップ)と繋がる通路も未発見だった。魔王討伐に際に、三日間の探索で下層に降る『ポーター』を発見できたのはかなりの幸運だったのだ。

 六日目の朝、地図(マップ)の一点を指してアレクはいった。

 「そろそろこの通路に挑戦してみようと思う。」

 その未探索の通路には、他とは異なるマークが書き込まれていた。

 そこは、落盤の(トラップ)が仕掛けられた通路だった。


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