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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第二十六話 第三階層の探索を終えました

ブックマーク登録ありがとうございます。

 「ほんま、ふかふかのベッドが恋しいわぁ。」

 首をコキコキ鳴らしながら、カレンさんが起きてきた。もっとも、元傭兵だけあって言葉ほどは辛そうではない。

 ジェシカさんは慣れているようで、元気いっぱいだ。前のパーティーでは一人で寝ずの番をさせられることも多かったらしい。

 アリシアさんとエレノアさんはちょっと眠そうだったけど、こればっかりは慣れてもらうしかない。

 それに、これでも他の冒険者よりは条件がいいんだよね。魔法鞄(マジックバッグ)があるから各自の荷物は最低限で、回収した摩核や他の収集物も魔法鞄(マジックバッグ)に入れればよいから、バックパックにはかなり空きがある。その気になれば毛布やクッションくらいバックパックに入れる余裕がある。

 アレクも慣れていないはずだけど、とりあえずは平然としている。やせ我慢かもしれないけど。

 さて、美味しい携帯食を食べて、今日も探索頑張りましょう。


 今日も昨日と同じでした、以上。

 どうしよう、一日の探索の成果が一行で終わってしまった。

 今日は南側に伸びる通路の探索を行ったのだけれど、見事に昨日と同じパターンだった。まあ、予想はしていたのだけど。

 通路は右へ左へと折れ曲がっていたけれど基本は一本道で、そこにゾンビやスケルトンが大部屋小部屋で大安売り状態だった。

 モンスターへの対応も昨日と同じで、小部屋には素早く押し入って前衛全員で瞬殺。アンデッド満載の大部屋はエレノアさんの魔術で一掃。もはや手慣れた作業です。

 一度、長めの通路の奥を徘徊していたゾンビが僕たちを見つけて、通路の小部屋のアンデッドを纏めて引き連れて襲ってきたりもしたのだけど、エレノアさんが貫通性のある強めの魔術一発でほぼ全滅していた。

 モンスターをトレインするモンスターというのも初めて見たかな。

 まあ、今日は何も成果がなかったというわけでもない。

 「これは、第三階層の地図(マップ)が大きく書き変わるかもしれないね。」

 「そうなのか?」

 アレクとしては、空白の地図(マップ)を埋めただけとしか思えないのかもしれない。けれども事はそれだけでは終わらないのだ。

 南側に伸びた通路は、左右に曲がりながらも大きく南へと進み、既知の地図(マップ)と重なってしまったのだ。これまでの地図(マップ)にこの通路を収めるスペースはない。

 もちろん、冒険者達が描いた地図(マップ)は正確に測量したものではない。通路の長さが少し間違っていたり、曲がり角の角度がちょっとだけずれていたりと、そうした誤差が積み重なって全体を見ると実際とは大きく異なる可能性がある。

 第二階層の地図(マップ)もそうした細かな不整合の辻褄を合わせるために何度も描き直されたらしい。情報が増えることで、第三階層の地図(マップ)もまた修正が入ることだろう。

 それにしても、このアンデッドだらけの通路の存在意義が良く分からないな。北と南の通路はゾンビやスケルトンの部屋以外何もない一本道。宝箱もその他回収できそうな資源も存在しないこの場所は冒険者にとって危険を冒して進む価値がない。摩核だけならもっと安全に狩りができる場所は他にあるからね。

 この辺りの正確な地図(マップ)あったとしても、わざわざ北や南の通路に向かおうとする冒険者はまずいないだろう。東側はまだ調べていないから何かあるかもしれないけど。

 いずれにしても、ダンジョンに侵入した冒険者を倒すという役にはあまり立たないだろう。

 「おそらく、この辺りのアンデッドは王都を攻める際の雑兵なのだろう。」

 しかし、アレクの見立ては僕とはちょっと違っていた。

 「魔王エグバートの本命はより深い階層の強いモンスターなのだろうが、戦争を行うためには数多くの雑兵も必要になる。この場所は大量のアンデッドを地上に送り出すことができる」

 なるほど、さすがはアレクだ、冒険者とは視点が違う。たぶんこれは、国を守る王族としての発想なのだろう。

 第三階層のアンデッド単体ならば倒すことのできる冒険者は多いし、軍の兵士でもどうにかなる。しかし、一般人には危険な相手だし、数がまとまれば対応できる冒険者は限られてくる。

 国軍の兵士とアンデッドの兵団が正面衝突する中、少数でもより強力なモンスターが暴れまわるというのは悪夢のような光景だ。

 最初の『骸骨通りスケルトン・ストリート』から合計して千体以上のアンデッドがいただろう。そして、空白地帯の多い第三階層で同じような場所が何ヵ所もあれば、万を超えるアンデッドの軍団ができても不思議ではない。

 そう考えると、冒険者に不人気のモンスターしかいない通路も戦力をプールするという点で有効なのか。そして、通路の真ん中にある『ポーター』で効率よく地上に送り出せるわけだ。

 どこまでが魔王の思惑通りなのかは分からないけれど、第三階層のモンスターだけでも地上に溢れ出したらヤバいことは確かなようだった。第三階層以降はモンスターの間引きが進んでいないからね。


 翌日から東の通路の探索を開始した。しかし、この通路の先には繋がっていたのは、やたらと広い領域だった。

 アンデッド入りの大部屋小部屋はこれまでと同じだけど、今度は幾つもの分かれ道が存在していた。分かれ道の先が行き止まりの一本道という場合もあるけど、分かれ道の先に更に分かれ道があったり、それが先の方で合流していたりと、かなり複雑な構造になっていた。

 三日間探索を行ったけど、まだそのすべてを探索し尽くしてはいない。十本以上の未調査の通路が残っている。全てを探査するには何日かかるか分からないため、ここで一旦探索を打ち切ることにした。

 通路は複雑だったけど、やはりゾンビとスケルトンばかりで宝箱の一つもなかった。ただ、新たに第四階層に降る『ポーター』を一つと、既知の地図(マップ)に繋がる通路を発見した。

 この新たに発見した『ポーター』の位置を含む地図(マップ)とたくさんの摩核。それが今回の探索の成果だった。


 「金貨五百七十二枚と銀貨六十八枚になります。」

 冒険者ギルドがどよめいた。

 その場にいた冒険者だけでなく、ギルドの職員まで驚いてアレクを見ている。

 それもそうだろう。高ランクの冒険者パーティーでも一度に金貨百枚を超える報酬を得ることは多くない。あったとしても、偶然高価な宝箱を見つけたとか、一月くらいダンジョンに籠って狩りまくったり採取しまくったりした場合になる。

 それが、第三階層の空白地帯をを五日ほど探索しただけでこの金額。なかなかに信じ難い光景だろう。正直僕も信じられない気分だ。

 報酬の半分は空白地帯の地図の値段だ。範囲が広い上に、幻の『昇り8番ポーター』の位置特定に、新規に降りの『ポーター』まで発見している。

 そして残りの半分は摩核の値段になる。これだけで迷宮核(ダンジョンコア)の買取価格を超えちゃってるよ。二千個くらいあったからね。普通は安全マージン取るから、短期間でこんなにモンスターを倒すことはしない。

 逆にドロップアイテムは全く換金していない。これだけの数のモンスターを倒せばそれなりにドロップアイテムも手に入るのだけど、第三階層で手に入るものは「スケルトンの骨」と「ゾンビの腐肉」だけ。どちらもほとんど使い道がないのでまず売れない。

 ドロップアイテムに関しては、むしろ第二階層の方が金になる。「ウルフの毛皮」は革製品として加工できるし、「オークの肉」は食用可だったりする。今回第三階層のドロップアイテムは一部エレノアさんが研究用に確保しただけで、残りは捨ててしまっていた。

 しかし、一度にこんなにたくさん摩核を持ち込んで、値崩れとかしないのだろうか? まあ、ギルドの摩核の買取価格には国からの報奨金も入っているから、純粋な摩核の価格とも違うのだけど。

 今回は、朝一の馬車で王都に戻ってそのまま冒険者ギルドに来て、それから査定が終わるまでほぼ一日がかりだった。摩核の数が数だったからね。

 アレクは報酬から金貨を十枚ほど抜き出して残りをそのままギルドに預けた。

 そして、つかつかと酒場の方に歩み寄ると、

 「今日は俺の奢りだ! 好きなだけ飲み食いしてくれ!」

 「オオー!!!」

 冒険者達は湧いた。

 前回に引き続きであるけれど、妥当な判断だった。今回の収入は高額過ぎる。この程度のことはしておかなければ、やっかまれるでは済まないかもしれない。まあ、アレクに喧嘩を売る度胸のある冒険者がいるとは思えないけど。

 金貨百枚を超えるような収入があったら、よほどの借金を抱えているのでなければ、貧乏な冒険者でも同じことをすると思うな。さして高い酒も置いていないギルドの酒場で一晩飲み放題をやっても、金貨十枚もかからない。他の冒険者を敵に回すことに比べれば安いものだった。


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