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勇者パーティーから追放された雑用係は全てを呪う復讐者に、なりません。  作者: 水無月 黒


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第一話 勇者パーティーを解雇されました

新作始めました。

 「グレッグ、現時点をもってお前を解雇する。お前はこの場でパーティーを外れてもらう。」

 その突然の解雇は僕の運命を狂わせる一大事、……のはずなんだけど、僕はその時別のことに気を取られていた。

 それは不思議な既視感と違和感だった。

 既視感(デジャヴュ)――僕は今この場の光景をどこかで見たことがある。

 だが、そんなはずはない。確かに僕は臨時でどこかのパーティーに参加することが多かった。中にはそりが合わなくて、すぐに解雇されたこともあった。

 けれども、解雇が行われるのは王都のギルドに戻ってからだ。こんなダンジョンの只中、それも最深部でなんてあるはずがない。

 今回、僕にとって初めてのことばかりだった。勇者と呼ばれるアレクのパーティーに雇われたことも、ダンジョンの最深部までやって来ることも、そしてこんなところで解雇されることも。

 似たような状況ですらあるはずがない。どこから既視感なんてものが出てきたのだろう。ましてや違和感なんて。

 「ここまでくれば魔王の間は目と鼻の先だ。雑用係のお前はもう必要ない。ここから先は俺たちだけで行く。お前は一人で引き返すといい。」

 台詞と表情があっていないよ、アレク。そんな泣きそうな顔をするなよ。ここは役立たずの雑用係()を傲慢に切り捨てる場面じゃないの?

 これが違和感だった。既視感を憶える光景は、しかし今見ている光景と完全には一致しない。不思議な既視感は、まるでこちらの方が正しいと主張するかのように違和感を生み出していた。

 うーん、本当にどこで見たんだろう。

 あ、思い出した。昔読んだ小説に出てくる場面にそっくりなんだ。

 あーすっきりした。あれ、でも何時そんな小説を読んだんだっけ?

 もどかしいな、一つ解決したと思ったら、また次の疑問が現れる。

 そもそも、今の状況そっくり何て、そんなピンポイントで未来を予知したかのような小説があるだろうか?

 というか、僕はあんまり余裕のある生活をしていたわけではないから、娯楽小説なんか読む機会はないのだけど。

 本当に、何時何処で読んだんだっけ?

 ちょっと記憶を遡ってみよう。

 えーと、そうだ、確かあれはまだ学生だった頃に読んだんだ、……あれ? え、ええ!?

 その時僕は、前世の記憶と言うやつを思い出していた。

 ちょっと、遡りすぎたよ~~~


 少し、落ち着こう。

 いきなり前世の記憶が甦ってきてちょっと混乱している。

 まずは情報を整理してみよう。

 僕の名前はグレッグ。たった今前世の記憶に目覚めた十七歳の冒険者だ。

 前世の記憶の詳細はちょっと置いておく。重要なことは、前世で読んだ小説の内容が今いるこの世界にそっくりだということだ。

 前世の視点で言えば、僕は小説の世界に転生したということになる。

 小説のタイトルは確か、「甦った復讐者 ~勇者パーティーを追放された雑用係は、不死之王(ノーライフキング)となり世界の全てを呪う~」だった。

 裏切られた主人公が次々と勇者やその仲間に復讐して行くダークファンタジーだ。ネット小説発で書籍化もされた小説だった。

 小説の主人公は、勇者パーティーに雑用係として雇われた冒険者で、名前はグレッグ。つまり僕だ。

 小説の冒頭で主人公は、お前はもう用済みだ、と言って勇者パーティーから追い出され、ダンジョンの奥深くに置き去りにされてしまう。

 まさに今の僕の状況だ。既視感があるはずだよ。

 小説の通りに話が進めば、いずれ僕はダンジョンから出られるわけだけど、その展開はちょっと避けたい。

 なにしろ、小説の主人公は一度死んで不死之王(ノーライフキング)になるのだ。いくら後で復活できると言われても、死ぬのは嫌だよ。それに復活してもアンデッドだし。

 そもそも、小説通りに話が進むとは限らない。先ほどから違和感を感じているように、小説とは所々ずれがあるのだ。

 例えば、小説では勇者アレクは復讐されるだけあって、雑用係の命など何とも思わない傲慢な人物として描かれている。しかし、現実のアレクは内心葛藤を抱えたままの苦渋の選択だった。まあ、やることは変わらないのだけど。

 些細な違いだと捨て置くことはできない。小説では勇者に倒された魔王の怨霊が復活するために主人公に憑りつこうとするのだけれど、勇者に対する強い憎しみでそれを撥ね退け、逆に魔王の力を取り込んでしまうのだ。今の僕には勇者(アレク)を恨むことはできそうにない。

 それに、小説通りに進めば、僕の将来は復讐に駆られた殺人鬼になってしまう。

 小説で読んでいる時は痛快復讐劇なんだけど、自分が実際になるのは遠慮したい。スプラッターなシーンも多いから、生で見ると結構グロいと思うよ。

 書籍版では勇者パーティーのメンバー全員殺して終わりなんだけど、ネット版ではその後も続き、勇者を支援したり称賛したりする人にまで復讐の矛先を向けて行く、終わりなき復讐譚になって行く。

 復讐だけの人生なんて、なんか嫌だよね。

 それから、作者の趣味なのか、人外ハーレムを作るのはまあいいとして、勇者以外のメンバーへの復讐というのがちょっとね。

 勇者パーティーは解雇された僕と勇者アレク以外の三人は若い女性だったりする。

 それで、この女性三人に対する復讐が、まず凌辱から始まる。これが、R18付いてないけどいいの? と思うほど過激て執拗なのだ。正直、ドン引きだった。

 …………。

 …………。

 …………。

 ごめんなさい、嘘言いました。前世では大変お世話になりました。

 誰に謝っているのだろう、僕は。

 でも、これはちょっとまずいかもしれない。前世では小説の登場人物でも、今生では実在の人物なのだ。

 前世の記憶なんて、そんなものは僕の妄想だと言われるのが落ちだろう。つまり僕は勇者パーティーの女の子の凌辱シーンを妄想していることになる。

 これはヤバい! こんなことが知られたら死ぬ。社会的にだけでなく、物理的に抹殺されてしまう。

 この記憶は封印だ。

 前世についてはもういい。今はこれからどうするかを考えなくては。


新作の掲載を始めたのですが、正直先の展開が煮詰まっていないままの見切り発車状態です。

試行錯誤しながら、なんとか週一くらいで更新できればと考えています。

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