1話
こんにちは!Soraと申します!
この小説を見てくださりありがとうございます!
残酷な描写は無いですが、死というものは登場しますので苦手な方はバックをお願いします
彼女にはこの世界がシロクロに見える
あの日から…
人に死が迫った時訪れるであろう恐怖、悲しみ、行き場のない怒りは彼女ーアリシアには今はもう訪れることの無い感情。アリシアは死ぬ時を待ち侘びている
そんな人間だった
「アリシア!起きなさい」
「ん?ああ、ミシェル様おはようございます」
アリシアの朝はここから始まる。
朝起きてから洗濯、料理、食器洗い
(まだ、やることがあるのが救いね)
アリシアは婚期を逃した22歳
街の方に出ると22歳はまだ学生だったりもするらしいが、ここアリシアのいる小さな村・ユノフェレスでは22は遅れている。
誰も貰ってなんてくれない。もらって欲しくもないとアリシアは寂しそうに笑う
あの人に心は全て持ってかれてしまったからと
そうでなくてもアリシアは村の人から嫌われていた、いや虐められていた
何もアリシアが特別いじめられるような事をした訳じゃない。
アリシアの母のせいなのだ
アリシアの母は村長に刃向かったから
この村にとって村長とは敬愛する絶対的な王様
だから、母が反逆したのは娘であるアリシアまで虐められることになった
それを守ってくれたのはあの人だけなのだ。アリシアの恋人ジル。
もうこの世にはいない人
「ミシェル様!今日の仕事は終わりました」
ミシェルはジルの母親で、この村の村長の次に偉い地位の人
僅か250人しかいないユノフェレスで序列は重要。
本来であればジルとアリシアがくっつけることは無いのだ
村長であるロザリーとは滅多に会う事は出来ない。
それでも序列2番目であるミシェルと話せるのはミシェルが2人の仲を誰よりも応援していたから
250人の最底辺に落ちたアリシアの家の牧畜は全て母の反逆により、無くなり今ではアリシアがミシェルの温情により彼女の経営する店で働けているのだ
「ミシェル様、今日はもう帰ってよろしいですか?」
「いいわよ。今日はちょうど…」
今日はティニス歴38年12月31日
5年前のティニス歴33年12月31日朝8時頃に彼は隣村ミエリスラにて遺体で発見された
…刃物で刺された跡があった
隣村ミエリスラ。彼女はここに週4のペースで訪れる。勿論夜に無断で
ミエリスラとユノフェレスは仲が良くない
ミエリスラにとってもユノフェレスにとっても相手はいつ攻めてくるか分からない敵
勿論ミエリスラで副村長とも言えよう彼女の息子が亡くなったのはミエリスラにとって非常に厄介な事
ミエリスラはそのために領地を1部ユノフェレスに渡したほどだ
どうして私は前を向けないのだろう、アリシアにも理解できなかった
何故新しい相手を見つけられないのか?
それほど彼を愛してしまったからだということはアリシアにだって分かるけど、5年経った今も犯人探しをしている自分が彼が死んだすぐあとと変わっていないことに驚いてもいた
辛い思いは増していくばかり
「何をしている?」
冷たい刃物が当てられる感覚
「誰ですか?」
今ミエリスラには不法侵入だから咎められても文句は言えない
「俺…リシャールだ」
「リシャール?」
その名はアリシアですら知っていた
隣村の最強兵士でしかもまだ25歳
「お前も名乗れ」
「…アリシアです」
バレたらミシェルの所もクビかもなんてアリシアは心配していた
いくら反逆しようと母は母。クビにされたら母を養えない
「どの村か?」
「…ユノフェレスです」
「顔を見せろ」
アリシアはここで初めてリシャールの顔を見た
(精悍な顔だ。日焼けしているけど顔は整っているな)
「お前…5年前にジルに泣きついてた女か」
「ジルのこと知ってるんですか?」
「知ってる。ジルと俺は定例の集まりで会っていたからな」
定例の集まりか…定例の集まりは基本的に序列の高い人しか参加出来ない3つの村が集まる集会のようなもの
「序列高いんですか?」
「まあ村長の孫だし副村長の息子だからな」
それって…凄い身分高いってことだよね
「母さんの姉は神官だし」
神官は唯一治癒魔法の使える職業で
神の声も聞くことが出来る
凄く偉い家なんだ
私の家とは真逆だな
「…ジルの事探りに来たのか?」
「ええ…罰は受けるつもりです。捕らえて縛るのでも何でも」
「いや…俺も仲良かったから…それに」
「それに?」
「いや、なんでもない。俺も犯人探し手伝う」
「あなたの村にいるかもしれないのにですか?」
「ああ、罪は罪。あと敬語やめろ」
リシャールの顔は少し赤い?夜だからかな
「分かった…ありがとリシャール」
「お墓参り行ってないのか?」
「これから行こうと」
「夜は暗い…一緒に行ってやる」
え?ガサツそうに見えて結構優しい性格?
「ありがとう」
やっぱり…こうなると思った
無言…だよね
リシャールをちらっと見ても話題を振ってくれる雰囲気では無い
まあ、序列も違うし
いや、やっぱりきまずい!
何か話さないと!
「リシャールは好きな人いる?」
ま、間違えた!これじゃ私がリシャールの事が好きみたい
そんな感情とうに消えたというのに
「いる」
あ、はい…何かもう少し言ってくれません?
「結婚するの?」
「まだ付き合ってもない」
「行き遅れって言われないの?」
「そんな勇気のあるやつ見たことない」
確かに…
「両親は?」
「自分たちの恋で忙しいから」
いいなぁ…私には父親がいない。
村の人によれば父は立派だったらしいが、シャーランというもう1つの村との戦いで死んだらしい
「告白しないの?」
「相手は俺の事…そんなに知らないから」
「応援するよ」
「…」
…どうすればいいの?
気まずいよ
「あ、あのさ!えっと野菜好き?」
ジルが野菜嫌いな友達について話してた
「野菜…嫌いだ」
「やっぱり…今度野菜嫌いでも食べられる料理食べる?」
「…ああ、食べる」
「分かった…今度持ってくる」
「…ここか?あいつの墓」
「そうだよ」
私はジルの眠っている墓に近づく
「…友達が来てくれたよ、ジル」
「今まで1度も来なくて…すまない」
「ジル、あなたは今どうしてる?元気にしてる?」
ああ、だめだな私。リシャールがいるのに
「ジル…」
「アリシア大丈夫か?」
「こっち向かないで…リシャール」
一筋の光が頬をゆっくりと伝う
いつまで経っても目は心に率直だ
「ほら」
渡されたふかふかの毛の上着にまるで子どものように号泣した
「…ありがと…これ汚れちゃったけど寒いでしょ?返すね」
本当は洗濯したいけど
「いや…お前も寒いから持って帰れ」
「リシャールも寒いでしょ」
「俺は慣れてる、それやるよ」
「え?いらないよ」
「あげるから」
「高いものでしょ?街でしか買えないような」
「俺にはいらないから」
「…じゃあ次会った時返すから」
「…次会う?」
あ、リシャールは会いたくないか
「ご、ごめん今のは」
「ああ!次会おう」
「…ジルも喜んでくれてると思う」
「じゃあ送ってく」
「ユノフェレスは近いから」
「いや、いいから」
「…ありがと」
不器用だけどいい人なんだな
泣いちゃったけど触れないし
「じゃあありがとう」
「ああ」
「どこ行ってたの?」
帰るとミシェルが玄関で待っていた
「お墓参りですが…?」
すぐにコートをかけ、調理場で紅茶を作る。紅茶はジルの好みだったからいれるのがうまくなった
「このコートは?」
「…」
アリシアは紅茶をふきだしそうになった
「アリシア?」
「…」
リシャールのコートです!なんて言えるか
「これは街のものじゃない?街のものをかけるなんて裕福な人…しかもそれを他人にかせる人この村にいる?」
「ミシェル様?」
「怒ってないわよ?」
こわーい…本気で
「ミシェル様…」
「誰のか言いなさい」
「…」
「給金減らそうかしら」
「やめてください…言いますから…怒らないでくださいね…リシャール…様です」
「リシャール?えっとブリアックの息子?」
「ブリアック?」
「ミエリスラの副村長よ」
「あ、そうです」
「じゃあ何故リシャールの物をあなたが持っているのかしら?」
怖い…オーラが怖い。目が笑ってないよ
「ミシェル様、決してリシャールと恋仲という訳では」
「それは…勿論敵の村同士だから困るけどでも私は別にずっとジルの為に独り身でいろだなんて言わないわ」
「え…じゃあなんで…申し訳ございません」
「何が悪いか分かってる?」
「敵の村に行ったこと?」
「よーく分かってるじゃないって言いたいけど、私行ったことまでは知らなかったわ」
「ああ!」
自分から行ったことを言っちゃった
「ミシェル様…なんで怒っていらしたのですか?」
「リシャールの物をキッパリ断らなかったからよ」
「なぜ?」
「リシャールから後で盗んだって言われたらどうするつもり?」
「リシャールはそんなことしません」
「会って1日の人を信用しない!」
「ごめんなさい…でもリシャールとジルは友達だったから」
「5年経って変わっていないとは限らないわ…でもまさかミエリスラに言ったなんて…ねえ?」
「すみません」
うわぁ怖い
「私副村長よ?」
「知ってます」
「こういう時はしっかり怒るのが副村長の役目でしょ?」
「え、ええ」
嫌な予感
「今日から村に役に立つ仕事を3時間しなさい!1ヶ月」
「酷い!」
「何か言った?」
「元々朝8時から夜8時まで働いているのに…」
「あなたが最長時間働きたいって言うからでしょう?」
「そうでした…でも、1ヶ月もなんて…ぅぅぅぅ…」
「泣く真似なんてやめなさい…声に出すなんてわざとらしい」
「でもミシェル様酷いです!」
「ミエリスラに行くからでしょう」
「…それはそうなんですけど、お慈悲を」
「ないわ」
「お美しくてお優しい天才ミシェル様」
「お世辞はやめなさい」
「はい」
やっぱり1ヶ月やるしかないのか
ドタドタドタドタ
ん?夜11時なのにうるさい足音?
ドン!
「ミシェル様失礼します!アリシアいます?あっ!アリシア、村長が呼んでる」
「スー!そ、村長が?私を?」
私の唯一の友達スー。本名スザンナ
「ええ…何かやらかした?」
「いや…多分…村長、ミシェル様に何か言ってました?」
ミシェルの方を向いて聞く
なんで?隣村に行ったことじゃないでしょ?
それともまさか…ばれた?
心臓がバクバクとなる
「初めて知ったわ」
「そうですか…スー、伝令ありがとう!ミシェル様、行ってきます」
やっぱりやめるべきだった?
村長の家はミシェルの家と近いのでアリシアはすぐに向かった
「村長様、アリシアです」
ノックを3回し、頭を垂れる
身分が上の人への礼儀だ
「顔を上げなさい」
カチャっとドアが開いて、アリシアはゆっくりと顔を上げた
「村長様、なんの御用でしょう?」
「分かってるでしょう?入りなさい聞かれてはまずいなら、ね?」
ばれたんだ…
「失礼します」
アリシアはゆっくりとドアを閉めた
「さあ言い訳をしなさい」
「何のことでしょうか?」
あくまで誘導尋問かもしれない
「とぼけないでちょうだい…私の部屋のもの盗んだでしょう?」
心臓が早鐘を打つ
「村長様、いくら母が貴女への反逆をしたからと言って」
「とぼけないで」
「村長様、貴女の物は簡単に盗めるものではございません。私にどうやって盗めと?」
「あくまでしらを切るのね?でも、さっきからアリシア、あなた1回も私は盗んでませんって言ってないわ」
この人勘が鋭すぎる
「村長様、盗まれたのはどのようなものなのですか?」
「村の人の情報帳と私のノート、ジルの事件の捜査資料よ」
え?
読んで下さりありがとうございます!
次話も近くに投稿しますので面白いと思って下さったら是非読んでください
レビュー等待ってます