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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

現代童話集

早く芽をだせ

作者: 早崎富也

はじまりはじまり~

ある日、一匹のカニが握り飯を拾いました。

家に持って帰って食べようと思いました。

歩いている途中で、柿の種を持ったサルに会いました。


サルは言いました。


「握り飯は今食べると無くなってしまうけれど、柿の種を植えれば柿の木になって、たくさんの柿が実るぞ。

だから、柿の種の方が得だぞ」


カニは握り飯と柿の種を交換しました。







家に帰るとカニは、早速種を植えました。


種に水をやると、カニは歌いました。


「早く目を出せ柿の種。出さぬとハサミでほじくるぞ」







次の日、カニが種の様子を見に行くと、芽が出ていました。


カニは歌いました。


「早く木になれ柿の芽よ。ならぬとハサミでちょん切るぞ」







さらに次の日、柿の芽は少しだけ大きくなりました。


カニは歌いました。


「早く木になれ柿の苗。ならぬとハサミでちょん切るぞ」







それから毎日、カニは苗の様子を見ては歌いました。


毎日毎日同じ様に歌を聴かされて、柿の苗はうんざりしていました。


(なんでコイツはこんなにせっかちなんだ?“桃栗三年柿八年”って言葉を知らないのか?

そんなに早く早くって言われたって、無理だよ…。)







数日後、なかなか柿の苗が大きくならないので、カニはだんだんイライラしてきました。


「おい柿の苗!早く大きくなれよ!

いい加減腹減ってきたぞ!何のために毎日毎日、水をあげていると思っているんだ!とっとと木になって、実をつけろ!」


柿の苗もイライラしてきました。


(うるさいよ!お前が勝手に植えただけじゃないか!

毎日毎日大声で歌って、迷惑ったらありゃしない!

どんなに急げって言われたって、俺はこれ以上早くは、大きくなれないんだよ!

なんでわかってくれないんだよ!)


しかし、喋ることができない苗の言葉は、カニには届きませんでした。







それから数日後、柿の苗はようやく小さなな木になりました。

しかしカニはすっかり腹を立てて、柿の木をハサミで切りつけ始めました。


「おら、急げ!さっさと実をつけろ!実をつけるんだよ!」


(痛い!痛い!わかったから、やめてくれよ!

ごめんなさい!ごめんなさい!急ぐから!早く実がなるように頑張るから!

だからやめてくれよ!痛い!痛い!)


柿の木は泣いて謝りながら頑張りますが、その謝罪も頑張りもカニには全く届きません。


カニはそれから毎日、柿の木を切りつけました。

あまりにカニが切りつけるので、とうとう柿の木は実をつける前に枯れてしまいました。


その後もカニは種を見つけては植えましたが、どの種もカニの思い通りに育たないので、その度にカニは気を切りつけ枯らしていました。


そうしているうちに、とうとうカニも空腹のあまり死んでしまいましたとさ。

何かを育てるときは、まず大事に育てましょう。見返りを求めるのは、育ちきってから。

でないと、育つ前に台無しにしてしまいますからね。

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