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リスのドングリ

 ミウちゃんはヘビに教えてもらったとおりに森の奥へ進み、ドングリ池にたどり着きました。水はとてもきれいで、透き通っています。池の底の深いところも良く見えました。じっと眺めていると、小さな魚が泳いでいるのが見えます。ドングリもたくさん沈んでいるようです。ミウちゃんはさっそくあたりにドングリがないか探しました。


 ところが、いくら探してもドングリは落ちていません。池は深いですし、ミウちゃんは泳げませんので、池に沈んでいるドングリはちょっと取れないでしょう。もし取れたとしても、それをまた池に投げ入れてお願いをするのはなんだかおかしな気がします。神社のおさいせん箱からお金を取って、また入れているみたいですから。


 しかたがないのでミウちゃんは道を戻りながらドングリを探しました。ドングリなんてどこでも、いくつでも落ちてそうなものですが、この時はなかなか見つかりませんでした。ようやく見つけたと思ったら、皮だけで中身はなくなっています。たぶんリスが食べた後でしょう。ミウちゃんが見上げると大きなカシの木がありました。この辺りで探してみましょう。


 ・・・ところが、探しても探してもドングリはありません。リスが食べた後のカラは結構ありましたが。ミウちゃんは困ってしまいました。他のところを探そうかと立ち上がろうとした時に、ほとんど土に埋まっているドングリを見つけました。すこし土をはらうときれいなドングリです。きっとリスが埋めたんでしょう。リスは冬に備えてドングリを巣に貯めこみますが、地面に埋めることもあります。後でそれを掘って食べるんですが、食べ忘れたドングリはそのままそこから芽を出して木になることもあります。ミウちゃんはそんな話を思い出しました。


 ミウちゃんはようやくドングリを見つけたので池へ戻ろうとしました。すると、ドングリ泥棒、という声がしました。そんな泥棒聞いたことがありませんが、ミウちゃんもつい反応してしまいました。声のする方を見るとリスがいました。大きなカシの木の枝からこちらを見ています。ミウちゃんはこのドングリはリスさんのですか、と聞きました。リスは俺が埋めたんだよ、勝手に持っていくなんてひどいじゃないか、と言っています。でもそれ程怒っているふうでもありません。


 ミウちゃんはリスさんにドングリを下さいとお願いしてみました。リスは構わないけれど、何に使うつもりだい、と聞いてきました。もちろんドングリ池に投げ入れて願い事をするためです。それならいいよ、一つ持っておいきよ、と言ってくれました。ミウちゃんはお礼を言いました。


 この森ではドングリは特別だけれど、どうして他のどうぶつ達は食べるつもりでもないのにドングリを拾っていくことがあるんだい、とリスは聞いてきました。どうしてでしょう。ミウちゃんもドングリを拾うことはありますが、何となく集めているだけです。そういえば、ケンちゃんはドングリでコマやヤジロベエを作っていました。リスはコマもヤジロベエも知らないみたいです。ミウちゃんが一生懸命説明しますが、さっぱりわからないようでした。


 じゃあそれを作ってくれないかな、とリスはいいました。ミウちゃんはケンちゃんほど工作は得意ではありませんし、コマを作るのも回すのもうまくできるかわかりません。でもリスは、作ってくれたらいくらでもドングリを上げるから、なんて熱心です。そこでミウちゃんは、ドングリのコマとヤジロベエをリスに作ってあげることにしました。リスは巣に戻って、たくさんドングリを持ってきました。両手にいっぱい、口の中にもいっぱい。両方のほっぺたがパンパンにふくらんでいます。そんなにいらないのに、とミウちゃんは思いました。


 さて、どうやってコマとヤジロベエを作ればいいでしょう。コマもヤジロベエも軸が必要です。軸なしでドングリを回す子もいますが、ミウちゃんは無理です。落ちている木の枝を探しますが、ドングリに刺すには太すぎます。ミウちゃんが困っていると、リスが何を考えているんだい、と聞いてきました。


 じゃあ俺が作ろう、と言ってリスは木の枝を拾い、両手で枝を持って器用に歯で削っていきました。すると、きれいな細長い、くしのようなものができました。ミウちゃんは少し長いのを2本と短いのを一本作ってもらいました。もちろん長い方は両はしを、短いのは片はしを少し尖らせてもらいます。ミウちゃんは大きくてきれいな形のドングリを選んでコマを、大きいドングリ一つと、少し小さくて同じくらいの大きさのドングリ2つを選んでヤジロベエを作りました。こんなにいらないと思ったドングリですが、たくさんあると丁度良いきれいなのを選べます。リスが上手に枝を加工してくれたので、思ったところに刺すことができて、ミウちゃんもなかなかよくできたと思いました。


 ミウちゃんは落ち葉をどけて地面をならして固めてからコマを回して、ヤジロベエがきれいにバランスするのも指にのせて見せてあげました。コマは両手の平にはさんで思いっきり弾くように回しました。ミウちゃんはあまりコマを回したことはなかったので、うまくいくか不安でしたが、何度かやってみるときれいに回せました。回転さえ充分に与えれば、落ちる場所や角度は悪くても、コマはがんばって思ったより回ってくれます。ヤジロベエもなかなか安定がよく、いい感じです。強く押しても、落ちそうでなかなか落ちません。リスにも喜んでもらえました。いくらでもドングリを上げるというので、片手に一杯もらいました。リスはたったそれだけでいいのかい、なんて言っていますが、食べるわけでもないし、そんなにたくさんドングリをもらっても困りますからね。


 ミウちゃんはリスと別れてドングリ池へ戻ります。リスはネコちゃんさよなら、ありがとう、とカシの木の上で手を振っています。ミウちゃんはどうしてリスまで私のことをネコなんて言うんだろうと思いましたが、そのまま手を振って別れました。私って動物達から見ると猫っぽい顔なのかなあ、と思いながら。


 リスがドングリを植えるのは有名な話ですが、面白いですね。リスは池に来る人がドングリを探すのを知っていて、イタズラで隠しているんだと思います

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