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ヘビの話

 ミウちゃんはケンちゃんを探しながらヘビの家目指して歩いてゆきました。今日のケンちゃんは耳や尻尾まで生やして格好もおかしかったですが、様子も少し変です。普段ならいつも向こうから声をかけてくるのに、ミウちゃんが話しかけてもまともに返事もしません。今も道から少し外れたところで黙って立っているかもしれません。どうしてそんなことをするのかはわかりませんが。


 ミウちゃんはキョロキョロしながら歩いていたので、足元にヘビがいるのに気付きませんでした。ミウちゃんがふと足元を見ると、ミウちゃんの細い腕ぐらいの太さはあるヘビがいました。ミウちゃんは声を上げるどころか、飛び上がってしりもちをついてしまいました。


 気付かずにいきなりずかずかと距離を詰めてきて、こちらを見たらまるで悪いものでも見たように驚かれて、いい気持ちなはずはありません。ヘビは鼻をならしてそのまま道の脇のやぶへ入って行こうとしました。ヘビは他の動物の通る道なんか使いません。たいていは横切るだけです。


 このヘビは、地味な単色で頭も小さいヘビでした。きっと大人しいヘビなんでしょう。派手で模様があったり、頭の大きなヘビは毒を持っているそうです。ミウちゃんはハイキングに行った時に教えてもらいました。毒ヘビは性格も普通のヘビとは違い、小さくても怖いそうです。ミウちゃんは思い切って話しかけてみました。あなたはコマドリさんが言っていた、その・・・ 食いしんぼうのヘビさんですか。


 ヘビは返事もせずにミウちゃんをじっと見ています。ヘビの表情はよくわかりませんが、あまり喜んではいないようです。迷惑で失礼な態度をとった上に、知らない女の子から食いしんぼうなどと言われて楽しい気持ちにはなりませんね。ミウちゃんはそこまで考える余裕よゆうがなかったんです。


 ミウちゃんはヘビの様子を見て、しまったと思いましたが、もう後戻りはできません。ヘビは首を上げたまま黙っています。何も口をきかないのはやはり気を悪くしているんでしょうが、ミウちゃんに興味がないわけでもなさそうです。ミウちゃんは迷子になっていて、家に帰りたいこと、コマドリからヘビに話を聞くように教えてもらったことを説明しました。ヘビは黙って聞いているようです。コマドリで思い出して、ミウちゃんは上着のポケットに大事にしまっていた小さな卵を出しました。これ、ヘビさんに上げるために持ってきました。よかったらどうぞ。


 やっぱりヘビは何も言いませんが、今度はミウちゃんの手のひらの上の卵をじっと見つめています。すると、口からよだれがたれてきました。ヘビは落ちそうになったよだれをしっぽでぬぐいました。ミウちゃんは両手で卵をいただいて、ヘビの前に出しました。はたから見るとなんだかおかしな様子です。ヘビはようやく口を開いて、それなら頂こう、と言ってすっと卵を取って食べてしまいました。ミウちゃんの手には触れませんでしたし、もちろんよだれも落としませんでした。ミウちゃんは少し驚きました。ヘビの卵の食べ方がスマートでとても素早かったからです。


 卵を食べて機嫌を直してくれたヘビは、前に森に迷い込んだ人の話をしてくれました。ヘビの言うには、一度会ってそれっきりで、森でも見たことはないから帰ったんだろう、とのことです。どうやって帰ったかはヘビも知らないみたいです。ミウちゃんは少しがっかりしました。ミウちゃんの残念そうな顔を見て、ヘビは悪いと思ったのかもしれません。そういえば、と続けました。ドングリ池のことは知っているかい、と聞いてきました。ドングリ池は、ミウちゃんがコマドリに教えてもらった歌の変な歌詞に出てきます。ミウちゃんは、ドングリを投げ込んだら願いがかなうという池のことですか、と聞いてみました。ヘビはうなずいて続けます。よそから来た迷子の人にもドングリ池のことを教えてあげたんだ。もしかしたら、ドングリ池でいえに帰れるようにお願いすれば、帰れるかもしれないよ。ヘビは少し申し訳なさそうです。


 ミウちゃんはドングリ池に行ってみることにしました。道なりに行って、森の更に奥へ行く左の道を行くと池に着くらしいです。ヘビにお礼とさよならを言って、ミウちゃんは先へと進みます。ヘビは軽くしっぽをふって、音も立てずにやぶの中へ消えました。


 歩きスマホの話みたいですが、どちらかというと、例えばみすぼらしい男、被差別民、強持てのおっちゃん等が、完全に相手の過失でぶつかられたのに、ぶつかってきた方が逆に驚いたり恐れたり、嫌悪感を抱いている、という、あるあるというかペーソスです。


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