コマドリの歌
コマドリの歌はたいへん上手でした。ミウちゃんもつい聞きほれるほどでしたから。
森の大きな池は底まで見える澄んだ水
ドングリ池にどんぶりこ
ドングリ入れてお願いすれば
どんな願いもかなうかな
大きな森の木 大きな根っこ
ボコボコごつごつ静かな広場
でも森の木は動いてる
音をたてないようにそおっと
気付かれないようにするする
じっと話を聞いている
嘘つき悪い子は捕まるよ
大きな川にかかるぼろぼろボロ橋
鳥のわたしにゃいらないが
わたのようなわたしもうっかりとまれば
それだけでもう落っこちそう
誰か直して下さいな
ミウちゃんは拍手をしてコマドリの歌をほめました。コマドリもどうやら機嫌が直ったようです。ミウちゃんはコマドリの曲がとても気に入ったので教えてもらいました。コマドリ先生は結構厳しく、歌は上手なミウちゃんにも指導が入りました。合唱部にでも入ったみたいです。コマドリの歌を覚えたミウちゃんですが、なんだかへんてこな歌詞だなあと思いました。
ミウちゃんはすっかりコマドリと仲良くなりました。話す上に歌まで歌うコマドリなんて聞いたこともありませんが、ミウちゃんはコマドリが好きになりました。コマドリは自分では大真面目ですが、どこか面白いんです。
歌を教えてくれる時に、ミウちゃんのことをしきりに子猫ちゃん、子猫ちゃんと言うので、ミウちゃんは少しむっとして、私は猫じゃありません、ミウって言うんです、と言ったら、首をかしげて、それじゃあもしかするとミウちゃんはトラか、ヒョウなのかなあ、なんて言っています。ミウちゃんはつい笑いそうになって、何とか我慢しました。コマドリはバカにされたと思ってまた機嫌が悪くなるかもしれません。
ミウちゃんはケンちゃんを見なかったか聞きました。コマドリは見なかったそうです。ついさっきミウちゃんの前を走っていたはずなのに。犬の耳と尻尾がついてたと思うんだけど、とミウちゃんが言うと、そんな人は見なかったねえ、と首をかしげています。
ミウちゃんは自分が迷子になったことをコマドリに話しました。そうだろう、そうだろうというふうにコマドリはうなずいています。この辺りでミウちゃんを見かけたことがなかったからでしょう。この森によそから人が来ることはめったにないそうです。
そういえばヘビがよそから来た人に会ったことがあるらしいねえ、ヘビに話を聞いてみるといい、とコマドリは言いました。ミウちゃんはヘビは苦手です。そう言うと、コマドリは、大丈夫、大丈夫、食いしんぼうな奴だけど、ミウちゃんを食べられるほど大きくないから、なんて言ってます。でも、そういう問題じゃありません。
前によそから来た人も、どうやってか帰っていったらしいから、やっぱり事情を知っているヘビに話を聞くのがいいと思うよ、と言われました。ミウちゃんはヘビに会いに行くことにしました。ケンちゃんのことも気になりますが、家にも帰らないといけません。ヘビの家はここからそう遠くないそうで、このまま道なりに行けば前を通ります。襲われることはないようですし、話もできるヘビですから、そんなに怖くないかもしれません。
コマドリは卵をくれました。ヘビに上げるためにです。ミウちゃんはこんな大事なものをもらっていいのか聞きました。コマドリの言うには別にヒヨコは産まれない卵だからいいらしいです。得ようと思えばまず与えよ、ってね、情報料じゃないけれど、お宅訪問にはお土産持っていくのが礼儀さ、なんて言っています。
ミウちゃんはコマドリにお礼を言ってヘビの家に向かいました。途中でケンちゃんがいないか探しながら。
設定はおそらく大抵ご存知だと思うので、歌は省略可かもしれません