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森の迷子

 全7話の童話です。

 ミウちゃんは森の中で目を覚ましました。ハイキングに行った時のようにまわり一面木が茂っています。どうしてこんなところで寝ていたんでしょう。あたりを見回しても何もありません。遠くで鳥のき声がするだけです。


 ミウちゃんが驚きあきれて木々と空を見上げていると、近くで落ちた枝を踏む音がしました。ミウちゃんはどきっとして、音のした方から逃げながら振り向きました。そこにはケンちゃんらしい人がいました。ミウちゃんは目はよいほうですが、それだけ遠かったんです。


 ミウちゃんはケンちゃーんと呼びました。もう一度呼びかけます。でもケンちゃんはこちらへ近づいてくる様子が全然ありません。ありえないことに、ケンちゃんは背中を向けてゆっくりと遠ざかってきます。ケンちゃんではなかったのでしょうか。それでも、こんなところに一人で取り残されてはたまりません。ミウちゃんはあわてて追いかけました。道のないところだったので、なかなか大変でしたが。やぶの枝や森の木が、悪気もないのにミウちゃんにからみついてきます。急ごうとするほど引っかかります。セーターはあちこちほつれてしまいました。


 さきほどケンちゃんがいたあたりまで来ると、道に出られました。ミウちゃんはまたびっくりしました。さっきよりずっと近くにケンちゃんがいたからです。まちがいなく本人です。待っていてくれたんでしょうか。ミウちゃんは、私達どうしてこんなところにいるの? と聞きました。ケンちゃんは何も言わず、ニコニコしているだけです。ケンちゃんはいつもの動きやすそうなズボンと、少し寒そうな薄手の上着ですが、あたまの上に動物の耳がついています。犬か猫のだと思いますが、どうしてそんなものをつけているんでしょう。ミウちゃんは近づいて触ろうとしました。すると、ケンちゃんは笑ってこちらを見ながら、後ろ向きに走り出しました。またミウちゃんをからかっているんでしょう。そんな場合じゃないのに。


 ケンちゃんは足が速いので、ミウちゃんでも追いつくのは簡単ではありません。それにしても今日のケンちゃんはものすごく速いです。ミウちゃんが本気で追いかけているのに、どんどん遠ざかっていきます。ケンちゃんの逃げる背中を見ていて、ミウちゃんはおかしなことに気が付きました。ケンちゃんのおしりにはふかふかの尻尾が生えていたのです。それが左右に揺れながら、しだいに離れてゆきました。


 ケンちゃんを追いかけながら、ミウちゃんは思い出しました。どうしてこんなことを忘れていたんでしょう。今日もケンちゃん達と鬼ごっこをして遊んでいたんです。ミウちゃんが鬼で、ケンちゃんを追いかけていて・・・ その後が思い出せません。ミウちゃんは息がきれてもう走れません。道のそばの大きな木の下で両手両ひざをついて倒れこんでしまいました。


 ミウちゃんが息を整える間もなく、すぐそばで声がしました。お客さんにしては無粋ぶすいだねえ。音楽を聴くにはもっと心にゆとりを持たないと。ミウちゃんはあたりを見回しますが、誰もいません。ケンちゃんにも逃げられたようです。


 どこを見ているんだい、失礼な子だねえ、と声は続けます。ミウちゃんは気味が悪くなってきました。まるで森がしゃべっているようにも聴こえます。まさかお化けでもいるんでしょうか。


 私だよ、わ・た・し。目の前のオレンジ色の小鳥が、羽をばたつかせながら変な動きで踊っています。くちばしもあわせて動くので、まるでこの小鳥が話しているようです。ミウちゃんはオレンジの鳥さんがしゃべっているの? と聞きました。なんだい、オレンジの鳥とか失礼な。私はコマドリっていうんだよ。あんたよそもんだね。鳥がしゃべっちゃ悪いのかい。しゃべれるだけじゃないよ、歌だって歌えるんだから、とそっくりかえっています。なんだかおかしいのでミウちゃんは笑ってしまいました。コマドリは馬鹿にされたと思ってますます怒っています。あんたわたしが小さいと思ってバカにしているね。わたしは小さいが歌は上手なんだよ。なんにもわかっちゃいない子猫ちゃんに、ひとつ私の歌を聴かせてあげよう、と言って歌い始めました。


 ケンちゃんは犬から。ミウちゃんは猫の鳴き声からです

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