プロローグ 蠢く脅威
広がる草原。その中に幾つもの天幕が建ち並び、その間を甲冑を着た兵士や軍馬が慌ただしく行き来している。その中の一際大きな天幕の中へ、1人の騎士が入っていった。
「戦況の御報告にあがりました」
天幕に入った騎士は、片膝をつき恭しく頭を下げて言う。
「うむ、申せ」
天幕の奥、野営地には似つかわしくない豪華な椅子に足を組んで座る男が、威厳のある声で跪く騎士を促す。
「はっ、我らが仕掛けた策により標的が我が陣営へと突出したところを伏兵にて襲撃、分断する事に成功いたしました」
「ほう! 策は成したか!」
男は組んでいた足を解き、前のめりになって騎士の報告を聞き入る。
「本隊から分断された標的は敗走し、プロフォンの森へと逃げ込みました」
「そうか、捕らえることはできなかったか……」
少し落胆したかのように言う男に、騎士は慌てて報告を続ける。
「げ、現在腕の立つ騎兵60名で構成した部隊で、プロフォンの森へ逃げた標的を追跡しております!」
「うむ、分かった」
再び椅子に深く座り足を組み直した男は、短い言葉で返す。それに対して騎士は強い気迫ある口調で言う。
「必ずや! 必ずや標的を捕らえ! 閣下の御前に連れて来てみせますッ!!」
「分かった。良い報告を待っておる。下がれ」
男は片手を振って、騎士に天幕から出るよう促す。
騎士は「はッ」と短く返事をして立ち上がると、男に対して一礼してから天幕の外へと出て行った。
1人になった天幕の中、男は1人腕を組み鋭い視線を天幕の入り口へと向かう。男の目は天幕の外、この野営地の先にある国、ラベリテ王国へと向いている。
「必ず中央で成り上がってみせる。その為の第一歩がラベリテだ。さっさと攻め落とさねばな」
独白する男の目は、まるで獲物を前にした獣のように爛々とぎらついていた。
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第1章もなるべく早い更新で書けるように頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします。




