プロローグ 大いなる器
モニターが無数に設置されている部屋で、一人の男が大きく息を吐き出す。
目の疲れを取るように眉間を手で揉むと、椅子に座ったままグッと両手を上に挙げて伸びをした。
そこに、後ろからもう一人違う男が現れ、椅子に座っている男を労う様に肩をポンっと叩いた。
「やっと完成したんだな」
後ろの男が、感慨深く言う。
「えぇ、これは完璧です。作り出すのに苦労しましたよ」
そういう男の顔は達成感に満ち溢れていた。
後ろの男も、満足げに数回頷いた後に、表情を引き締めた。
「あとは、これに相応しい人物が現れるのを待つだけか」
「そうですね、ですがこれは奴に気づかれない範囲で、出来るだけハイスペックなものにしているので、この巨大な力を扱える人物はそう簡単には現れないと思います」
椅子に座っている男が、自分が作ったモノをもう一度確認するように見直しながら言う。
「確かにそうだな。だがしかし、あまり悠長に待っている事もできん。今こうしている間にも、あやつは着実に力を蓄えている」
「そして、そいつの企みに気付いているのは私たち二人だけですもんね」
椅子に座っている男が、今自分たちが置かれている現状に、苦虫を潰したような顔になる。
後ろの男が、再び椅子に座っている男を励ますように肩をポンと叩いた。
「きっと大丈夫だ。この『大いなる器』を持つものが全員揃い、強く育ってくれれば、それは必ず奴の企みを阻止し、打破するだけの力があるはずだ」
後ろの男は力強く言い切る。
その瞳には、強い自信と確信に満ちた光が宿っていた。