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スキル詠唱

「ん。ここは?」

あたりを見まわすと遥か先まで続く草原。

風が吹くたびに膝元まである草が揺れる。

そこでようやく理解する。

「遂に来たんだ。」

思わず俺は声に出して確認する。

胸の鼓動が止まらない。

今までの人生でこんなに心躍る出来事があっただろうか?

その答えは「否」。

俺はここで命をかけて自らの「最善」を尽くさなければいけない。

そうだ!雪たちはどこだ!

探さなければならない。

俺は歩き始めた。


だが歩いても歩いても景色は変わらない。


ここにいるのは俺だけではないのか?

そう思い始めた時、前から緑色のものが近づいてくる。

ゴブリンとの初めての遭遇だった。

数は5匹。

確認した途端足が震え、歯がカタカタと音を立てる。

恐怖している。

見たこともない化け物。

モンスターを初めて見て俺は恐怖しているんだ。

逃げるか?

だがなぜか逃げては行けない気がした。

ここで逃げては後の人生もまた逃げ続けなければならなくなる。

元の世界と一緒だ。

それは嫌だ!

そう思ったとき自然と身体の震えは止まった。

「よし。止まった。」

まだゴブリンどもとの距離は500mはあるな。

あれ?俺の目がよくなっている?

まぁ後からでいい。そんなことより逃げないことを決めたからには

「どう倒すかだよな。」


あいつらからは気づいていないようだ。


倒す方法は一つだけ心当たりがある。


そう。スキルだ。

まだ確認していないが俺はおそらくメイクというスキルを持っている。なぜか頭に刻み込まれているようにすんなりと使い方がわかった。そのスキルはその名のとおり、「作る」能力だ。

そのスキルで武器を作ったら倒せるはずだ。

俺はためしに剣を作ってみる。


詠唱で形作り、スキル名で具現化する。


「我に剣を!メイク!」


目の前に光が集まり剣の形ができる。

そしてついに光が収まり剣が出てきた。


初めてのスキル使用で感動するまもなく

あいつらは俺に気付き走って来た。

やるしかない。

そう心に決めて俺は目の前に剣を構える。


一匹のゴブリンが奇声をあげて襲いかかってきて俺は、慌てて情けない軌道で剣を振る。

たまたまゴブリンの頭に剣がくい込み、そいつは動かなくなった。


「次!」


ほかの4匹は俺の周りを取り囲むように配置していた。


このままではまずいと思い急いで剣を引き抜き、俺の右前にいるやつに投げつける。

見事に刺さり動かなくなった時に残りの3匹が一気に襲いかかってきた。そして俺は走って距離をとり、

「我に剣を!メイク!」


急いで剣を作りその剣で真ん中のゴブリンに切りつける。

そして切り返して右と左にいたゴブリンを切る。

切り返したときに振り切ったのが幸いしたか、右と左にいたゴブリンは動かない。


そして血だらけで叫びながら襲いかかってくるゴブリンに

しっかりとした一撃を与えた。


そこでやっと最後のゴブリンは動かなくなった。


「はぁはぁはぁ」

危なかった。少しでも気を抜いたらこうなったのは自分だった。


だが頑張った褒美があったようだ。

「スキル:メイクのレベルが1になりました。」

「個体名:黄金 黒 (こがね くろ)のレベルが1になりました。」


なんと俺のレベルは0からのスタートだったようだ。

レベルがあがってなにができるようになったのか。

確認しなければならない。

だがそれよりも

「早く雪たちと会わなければあぶない。」


そう思わせるには充分な出来事であった。

はやく探さなければ。



そう思った瞬間。



空間がビキビキと音を立てて割れる。

そしてその中から、

見慣れた白い髪。

ふっくらと強調する豊かな胸。

その女性がその空間から放り出された。

できる限り優しくふんわりと支える。

「雪...?」

そう呟いたのもつかの間

「あれ?黒?あの男は?」

雪は透き通るような赤い目で俺の顔を覗いた。

やばい、安堵してしまう。

「あれ?黒、不安ならおいで」

俺のここを見透かしたように雪は腕を広げ、ハグの許可を出した。


「今は雪しか見てないよ?大丈夫だよ。」


そう優しく微笑みかける。



その時張り詰めていた緊張が一気に解けた。

雪には俺の強がりなんてきかないか...,。


「雪、ごめん少しだけいいか?」

「うん。もちろん。」

そっと雪を抱き寄せる。

「俺守れるかなぁ。雪とともはる守れるかなぁ。不安で仕方ねーんだよ。くっそ。情けねぇ。」


そういい俺は雪にしか見せない涙を一粒流した。

俺は弱い。心も身体も弱い。

強がろうと頑張ってもまだ高校一年だ。

読んできた小説みたいにかっこよく成長もできない。

だから、元いた世界と違う人生を歩もうと思った。

だが雪を見た瞬間これだ。

強くなろう。

強くなって強くなって。

いつか雪を心の底から安心させてあげよう。

黄金 黒はそう決意した。



レベル0から始まった俺の異世界生活の幕開けだった。

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