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ツキノフルヨル

作者: 根室秀太

昔作っていた同人ゲーム「月の降る夜」(StudioWALK)のプロット的な小説。

こいつをベースにシナリオを作りました。

―――もうすぐ、だね。

うん。

結局・・・月、落ちてくるね。

頑張ってたのにね。

うん。

みんな死んじゃうんでしょ?

政府の連中は、火星に避難するみたいだけどね。もうシャトルの準備もできてるって。

へぇ・・・ずるいね、えらいひとは。

ま、しょうがないでしょ。こっちは一般人だからなぁ・・・そっちは、どうするの?

うん・・・どうせ逃げてもだめだろうし、このままで。

俺も。どうにもならないしね。

うん。このまま、ずっと話してようか?

いいね。朝まで?

そう、朝まで。

じゃあ、何から話そうか?

うーん。

・・・しりとりでもやる?

あはっ。


・・・みんな、いなくなっちゃったね。

そうだね。

そっち、もう月は見えないの?

・・・何とか地平線のはしっこに写ってるけど。

・・・そっか・・・こっちはすごいよ。空の半分ぐらいが月に覆われてる。

いいなあ。きれい?

うん。なんか、吸い込まれそう。

後どれぐらい?

30・・・分ぐらいかなぁ。

逃げなくていいの?

・・・どこに?

そっか。・・・そうだよね。

・・・こんな月見たの、生まれて初めてだよ。

いいなあ。

残念だね、そっちは。

ちょっとは見えるけどね。

・・・今ね、屋根に寝っ転がってるんだ。

仰向けに?

そう。

いい気持ち?

ひんやりしてて、いい気持ち。

そっか。あたしもやろっと。

うん。

ほんとだ、いい気持ち。

でしょ?

あ、今すごい流星。

ちりが摩擦で燃えてるんだ。

・・・デリカシー無いなあ。

ごめん・・・でもほんとにきれいだね、流星。

うん。

・・・・・・・・・・

今どんな感じなの?

何が?

景色。こっちはあんまり見えないから。

ああ、そっか・・・うーん。

ね、どんな感じ?

視界一杯に月が広がって・・・その向こうに宇宙が見えてて・・・。流星が、月の周りでキラキラ光ってる。

・・・想像もつかないね。

何だか王様みたいだよ、あの月。流星の王冠を被って行進してるみたい。

ふ~ん。

見た人にしか解らない、かも。

え~、ずるい。

月が大きくて、きれいで。

うん。

こんなの見れるなんて、良かったよ。

・・・ね。

何?

愛してるって、言って。

・・・あいしてる。

あ~っ、本気で言ってない。

本気だって。好きだよ、すごく。

・・・あたしも。

うん。

だいすき。

・・・うん。

・・・

・・・

残念だね、会えなくて。

うん。でも、こうやって話できてるし。

顔も見えるしね。

これも文明のおかげです。

うん。

・・・あ。

何?

そろそろ、時間だね。

・・・うん。

・・・手を伸ばせば届く感じ。

・・・うん。

先に、行ってるから。

うん、まってて。

空、飛べるかもよ。

え?

月の引力に引き寄せられて、さ。

・・・いいね。

それにしても、さ。

うん。

・・・本当に・・・月が、きれいだね・・・

・・・・・・うん。



・・・またね。


・・・さよなら。



だいすきだよ、ずっと。





音も無く。


ただ、静かに。


一つの星が、世界から消えた。





ツキノフルヨル。

END

過去作発掘第二弾。

初出はこちらのほうが古いです。なんと1998年。

当時は携帯もメールしかできなかったので、未来の端末で会話をする二人を想定していましたが、今だと逆にしっくりきますね。LINEとか。

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