貧乏神と秋の暮
ある日私は夢をみた
私でない者が
私を騙る夢を
私でない者が
私の口を通じて
ありもしないことを云い
周囲を惑わせ
翻弄し
愚弄する
そういった夢をみた
私でない者は
いちいち愉しそうであった
私が嫌われる程
嬉々として無駄口を叩き
周囲が嫌な顔をするほど
呵々として人を小馬鹿にした
端から見ている分には
痛快そのもの
いい気味であった
これが私でなければ
何の遠慮もせず
何の配慮もせず
云いたいままに云い
したいがままにする
私でない者が
私の何もかもを棄てていく
私でない者が
私の知人という知人を端から裏切り
職も車も家も財産も端から棄てて
いよいよ棄てるものがなくなった頃
私でない者は
私を見棄てて去っていった
どうせなら
私の名前も
棄ててくれれば良かったのに
私でない者は
いったい何の為に
私の持つさまざまなものを葬ったのか
考えてはみたが答は出そうになかった
私の身に起こったことは
あまりに突拍子もなく
あまりにも不条理で
あまりにも度を越していた
そして
あまりにも不可解だった
私は基本的に神を信じない
人間にとって都合のよい神など
決して存在しないからだ
しかし今となっては
これだけは断言できる
貧乏神は実在する
貧乏神は私になりすまし
あれよあれよという間に
私のすべてをを棄てた
私の人間関係もそのひとつだ
年々行き詰まってゆく人間関係に
私は正直辟易している
誰かと仲良くすれば
他の誰かとの関係が拗れ
疎遠になればなったで
云い様のない寂しさにおそわれる人に相談しようにも
何から切り出していいのか分からず
云いたいことのすべてを内に抱え込む
私の悪い癖だ
そういったことを人に話したところで
人は何かをしてくれるわけではない
問題は自分で解決するしかなく
自分以外の力はあてにできない
自分にはどうにもできないことに出くわす度
私は自身の無力と
事実として
自身の孤独を思い知る
しかしながら
貧乏神が何もかも棄ててしまった今となっては
そうした苛立ちや
手に負えぬほど膨れ上がった虚しさなど
最早問題ですらなくなったという気がする
むしろどうでもいいと云うべきか
貧乏神が私に教えたのは
私が自由だということだ




