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夢ノ樹  作者: 明鳥夢猫
2/11

第壱枝〜巻〜

第一話です。あなたは、何度も同じような夢を見ることはありますか?

 夢は、見る人の精神に深く関わっており、記憶を整理したり、その時の精神状態を暗示したりするという。


 だから夢占いには、精神分析の側面もあるのかもしれない。


 私は、幼い頃から頻繁に竜巻に遭遇する夢を見た。


 テレビで竜巻の出るパニック映画を観た時の影響だろう。


 画面に写る巨大竜巻が、泣き叫ぶ人々を無慈悲に吹き飛ばしていく様が、衝撃的で恐ろしかった。映画の舞台は外国で、日本で竜巻が起こることはめったにないのだが、他人事とは思えなかった。いつ自分の身近で起こるかと考えたものだ。


 そのようなトラウマになっても、私は画面から目を離すこともできなかった。


 元々、ぐるぐる回るもの、巻いているものに対し恐怖と共に、奇妙な魅惑を感じていた。


 波紋、渦巻き模様、とぐろを巻く蛇、正月に回すコマ、お湯を抜く時に生まれる浴槽の渦、同じ所を何度も旋回する羽虫、銀河…等々は、不思議とずっと見ていられる。銀河だけは生では観られないが。


 渦や竜巻を見る時は、なんとなくゾッと背筋やお腹の辺りがざわつく恐怖があるが、それでも見たくなるのだ。

 怖いもの見たさというやつだろうか。ホラー映画は苦手だが、ホラー好きの気持ちが少し分かる。


 そんな非日常的な竜巻にスリルを求めたのだろうか。


 私の夢の中には、竜巻がよく都会や身近な地域に現れて、街を破壊する。


 いつも自宅のアパートのベランダから、遠くに竜巻が発生し、段々こちらに近づいてくるのが見えた。日によって、細い竜巻が3つある時もあった。


 私は家族と共に自宅の押し入れに隠れたり、車で逃げ回ったりした。時には、現実にはありもしないが、自宅に地下シェルターがあって、暗闇の中、震えながら竜巻が過ぎ去るのを待った。


 そのように夢の中では必死に逃げ惑うのだが、うまく生き延びることもあれば、そうならないこともあった。


 ある時、私は家族と木の幹に捕まっていたが、竜巻の勢いに負けて私だけ吸い込まれた。


 スローモーションのように感じられた。

 飛ばされるというよりは、ゆっくりと浮かんで地上から寂しく離れていった。

 魂だけ抜かれたように感じた。

 死ぬ時って実はこんな感じなんじゃないかと思った。

 次の瞬間、目が覚めた。


「おはよう…また竜巻の夢見た」


 小学生から中学生くらいまでは、あまりにも頻繁に竜巻の夢を見ていたので、その時の恐怖を家族にもよく話していた。


 最近は、洪水の夢を多く見るので竜巻の数は減ったが、時々見ると、


「あ、久しぶりだ」


 と思う程度だ。夢であることも、なんとなく分かっている。

 そして、逃げたり隠れたりしながら、竜巻をしげしげと観察している。



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