自分の実力を正しく知らぬ者に女神は微笑まない
失敗・挫折
それを味わって人は本当の意味で己の力を知る
休憩がてらログアウトして、冷蔵庫から冷えたビールを1本取り出す。
それを一気に喉に流し込むと、精神的な疲労が和らいだような気がする。
時間はまだまだある。
というより、明日は遅番だったはずだ。
暇つぶし程度に考えていたが、少しの間にずいぶんのめり込んでる、と自分でも思うがそこはそれ。
つまみに自作したベーコンと、トマトとスライスチーズを冷蔵庫から出す。
トマトを良く洗って、6等分に切る。
そして削ぐようにしてベーコンを薄切りにした物を網焼きにする。
少し焦げ目が付いたら切ったトマトの上に乗せて、チーズを被せる。
それを皿に盛ったら、レンジで軽くチーズを溶かす。
それに爪楊枝を刺せば、軽いつまみが出来た。
トマトがアルコールの分解を助けてくれる一品だ。
本当はバーナーがあれば良いのだが、流石にそこまでは求めない。
ビールを飲んで、つまみを摘む。
本当に30代になるまでは、「そんなおっさんまっしぐらな事はしない」・・・って言ってた記憶があるんだがなぁ。
適度な休憩を終えて、俺はまたモンスレにINする。
キャラクターである俺が目覚める。
ちなみに此処は、鍛冶屋の休憩室だ。
周りには酒を飲んでる奴も居れば、寝てる奴も居る。
目立たないように、休憩室を後にする。
夜の責任者NPCに聞いてみると夜でも鍛冶場は使えるらしい。
なんでも建物全体に消音の魔法が働いていて、鍛冶の音は鍛冶場だけでしか聞こえないそうだ。
それなら次のステップを・・・と思ったが、見習いとしての教練は昼間しかやってないそうだ。
ただ見習いとして腕を鍛えたいなら鍛冶場を使っても良いし、屑鉄を幾らでも使っていいとの事だ。
とりあえず訓練にはなるだろ・・・そう思い、鍛冶場を使わせてもらうことにする。
屑鉄を溶鉱炉に入れて溶かし、一本の棒状のインゴットにする。
棒のような形にするだけでも一苦労だ。
で、出来た鉄の棒を俺が選んだ3つの初期スキルの1つ『鑑定』を使ってみてみる。
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Name:鉄の棒
class:インゴット・武器
鉄で出来た棒。
何に使うかは貴方次第。
AP+1 打撃属性 重量2
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こんな感じで見えるのか、と関心しつつ鉄の棒を炉に入れて加熱する。
ハサミで取り出して赤熱した部分を大きめの片手鎚で思いっきり叩いていく。
温度が下がってきたら、今までハサミで掴んでいた方を炉に入れる。
そしてまた熱い内に鉄を叩く。
それを繰り返して、少し厚めの金属板を作り出した。
それに線を針で描いて、その線を鏨で切り落とす。
形は大型のナイフ状だが、最初に持ち手の部分を作る。
持ち手の部分は自分の手に合わせて、切った所を少しずつ削っていく。
持ち手が自分の手の握りより少しだけ細くなった所で、持ち手の部分の真ん中に穴を幾つか空ける。
次にナイフの形をちょっと工夫することにした。
切っ先を重くして、重心が切っ先にくるように鏨で切り取って、刃の部分を作る。
とりあえず刃を作るように簡単に研いでから切っ先から刃と同じ方向に伸びる出っ張りの様な部分を杭のように尖らせていく。
そして炉の中に入れ、刀身が真っ赤になった時を見計らい水にぶち込む。
凄まじいまでの水蒸気で視界が遮られるが、水の沸騰音が小さくなるまで待って取り出す。
ナイフを取り出すと、自分の思い描いた形・・・と、まではいかないが中々上手くいったと思える姿が見えるはずだった。
取り出したナイフには無数の罅が入り、途中で折れていた。
そんな簡単に出きる訳ないな