新たなる旅立ち~脱農場引き篭り~
この話には動物愛護に正面から喧嘩を売っている内容が含まれます。
ご注意くだしぁ。
俺の名は『天道蟲』、VRMMOでしがない農民として生活している生産プレイヤーだ。
時折、熊だの兎だの狩って、ゴブリンを収穫する程度しか外にも出なくなった俺だが、とある問題に直面している。
と言うのも、先日受けてしまったクエストのせいだ。
クエスト名『施設職人への手紙』
このクエの成功条件は施設職人へ手紙を渡すこと。
ちょっと大きい街へ行けば居るとの事で、始まりの街へ走ったのだが、居なかったのだ。
なんでも始まりの街で店を構えても客が来ないので首都に移ったそうなのだ。
しかも他の街へ行くより首都へ行く方が近いという・・・ね?
さて、こっからが問題なんだ。
パーティーを組める奴が居ない。
まぁ鎧も着ずに作業服だけで首都目指すとか縛りプレイかと言いたくなるわな。
そんな訳で、ソロで向かう他無いようだ。
先が思いやられるぜ。
~???視点~
「ジェイル!右!」
「っく!?」
俺の死角から現れた熊型モンスター『ハンター・ベア』の爪が横腹を抉る。
痛みを堪えて大剣で反撃するが、腕を切り裂くだけで有効打にはならなかったようだ。
「グォォ!」
左手を薙いで来たけど、左手に装備した小盾で防御する。
防御しきれずに回るようにして後ろに下がる。
「ジェイル!大丈夫なの!?」
「問題ありありだよ!」
そう叫び返してポーションをダメージを食らった部位にかける。
モンスレ、痛みは然程ではないんだけど、不快感がリアルに感じられるから性質が悪い。
「ジェイナ!そっちは!?」
「ごめん!こっちも余裕が無い!!」
ジェイナの方を軽く見ると、兎型モンスター『ホーン・ラビット』と猪型モンスター『スタンプ・ボア』の2匹に苦戦してるのが見えた。
「糞っ!本当に口だけの奴等のせいで!!」
「喋る前に手を動かして!」
始まりの街から首都に行く道を護衛するプレイをしているという自称『凄腕プレイヤー』
だが実際はターゲットの敵愾心管理も出来ない・敵の近くで魔法の詠唱を始めるような地雷プレイヤー達だったのだ。
ジェイナが「人も集まらないし、この際お願いしてみようよ。」なんて言わなければ・・・・。
いや、たらればはどうでも良い。
問題は今のこの状況だ。
最初は、ゴブリン スタンプ・ボア ホーン・ラビットの3体だったのだ。
ジェイナが敵を引き付けてる間にゴブリンを倒して、さっさと応援に行く予定だったのが、今はハンター・ベアまで増えた状況だ。
・・・・正直不味い。
ハンター・ベアは2人で攻めるのが基本とまで言われるモンスターだ。
魔法攻撃に弱いけど、生憎と俺は魔法攻撃なんて出来ない。
ジェイナの方も回復系魔法は覚えてるが、攻撃魔法は覚えてなかった筈だ。
スタンプ・ボアとホーン・ラビットは1人でも相手できるモンスターだけど、スタンプ・ボアの1撃をまともに喰らえば軽装のジェイナでは即死する可能性もあるので丁寧に立ち回らなければならない。
かといって俺はハンター・ベアに一進一退、むしろ押され気味だ。
「くそぉ・・・。」
諦めが頭に過ぎった時だった。
『ウオオォォォォォオオオオオ!!!』
咆哮が聞こえた。
そして、近くの森から出てきたのはゴブリン。
しかも大群と言って良い程の量だった。
「はぁ!?」
「何なの!?」
沸いて出てきたゴブリンは俺達に襲い掛かってくると思ったが、そんな事はなかった。
むしろ、凄い勢いで逃げてるようだった。
「タスケテ!タスケテ!!」
「ニゲロ!オニガクル!!」
口々にそんな事を叫んでる。
大量のゴブリンが走り去っていくが、数匹モンスターにぶつかったせいでターゲットにされ熊達に攻撃されている。
「ピギャァ!?」
そんな断末魔と共に3匹程のゴブリンが『飛んで』来た。
慌てて避けると、木にぶつかって身体が折れ曲がったり、地面を滑って摩り下ろされたりしたが、そんなのは関係ない。
森の奥から現れたのは、身体から土色のオーラを迸らせ、鍛冶場のNPCの作業服と同じ物を着た、スキンヘッドの小父さんであった。
「待てや肥料共!!」
轟っ!!と小父さんから凄まじいまでの殺気を感じる。
ーーーーーーアレはヤバイ
その結論を脳が出す前に身体が震えていた。
「ヒ、ヒィィ!!」
「っち、殆ど逃げちまったな。」
そう言いながらゴブリンに何かを振り下ろす。
「タスk!!」
助けを求めたゴブリンに向かって振り下ろされたのは、丸太であった。
・・・いや、違う。
丸太のようだが、縄で括られている。
それを杭で止めているようだが・・・丸太から釘バットを彷彿させるように杭がそこかしこから生えていた。
モーニングスター?
確かそんな武器があった筈だ。
だが、人程もある丸太を使った武器など人が振り下ろせる物では無い。
一体なんなんだ?この人。
「『キャリアーバッグ』『収納指定』『ゴブリン』」
さっき飛んできたゴブリンと潰されたゴブリンが袋に回収される。
『キャリアーバッグ』冒険者ギルドでかなり高い値段で販売されているモンスターの死体を収納する鞄・・・というより袋で、西遊記に出てきた瓢箪のように指定したモンスターの死体を収縮し収納できる物だ。
これでプレイヤーという事が確定した。
しかもキャリアーバッグを買えるという事は、かなり高位のプレイヤーだ。
俺は藁にも縋る気持ちで叫んだ。
「すみません!!助けてください!」
「んぁ?」
スキンヘッドの小父さんが呆けたように俺を見てくる。
「お願いします!私達の手に負えそうにないんですぅ!!」
ジェイナが泣きそうになりながら訴える。
ジェイナのHPはもう危険域のレッドを示している。
俺のHPも半分以下のイエローだ。
小父さんは少し考える仕草をとるが、ホーン・ラビットが動いた事で状況が変わった。
ホーン・ラビットは動いてないプレイヤーを率先して襲う傾向がある。
つまり、小父さんに向かって跳んだのだ。
「・・・・やんのか?ウサ公。」
呟いたと思ったら、ジャンプして突進したホーン・ラビットを左手で掴み獲っていた。
そして、左手を振りかぶってスタンプ・ボアに野球のボールをぶつけるように投げた。
突進していたスタンプ・ボアに、勢い良くぶち当たって撥ね飛ばされる犠牲者。
スタンプ・ボアがターゲットを変更して小父さんへ向かう。
「ブモォォォオオオオオ!」
「猪風情が!」
小父さんがスタンプ・ボアの牙を掴み
「調子に!」
脚でかち上げ
「乗んなぁぁあ!!」
ぶん投げた。
「・・・・・んなアホな。」
「・・・・・何アレ?」
その光景を見てしまった俺とジェイナが同時に呟いた。
まだ動けないスタンプ・ボアに向かって杭丸太を振り下ろす。
ゴシャリという音をたてて動かなくなった犠牲者その2。
「ガァア!」
ハンター・ベアが小父さんに向かって突撃する。
敵愾心は俺に向いていたはずなのだが、小父さんを脅威と看做したのかもしれない。
「熊公が!」
何処から取り出したのか小振りな長柄のハンマーでハンター・ベアの顎をかち上げ
「俺の農業の!!」
そのままハンマー投げのように身体を一回転させ、勢いの乗ったハンマーが左脇腹に減り込む。
「邪魔すんなぁああああ!!!」
右腕一本だけで杭丸太を振り下ろす。
またもゴシャリと瑞瑞しいが重い破砕音。
「害獣死すべし、慈悲は無い。」
これが、俺と妹が後に『師匠』と呼ぶことになる人物との最初の邂逅だった。
~視点終了~
天道「大地の波もn!!」
作者「おい!馬鹿やめろ!!」




